2023年04月25日

月刊PR誌『機』2023年4月号 巻頭「総合知を創るために」

 

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社主の出版随想

▼久しぶりに沖縄を訪ねた。旧交をあたためることと、最近亡くなった友の供養の旅である。まず、沖縄島に住む安里英子さん。昨年大病を患い、あと何カ月といわれたこともあったが、最近少し持ち直してきたとのこと何よりである。出会いは、玉野井芳郎氏の推薦として1985年秋の〈フォーラム・人類の希望〉のシンポに、パネラーとして参加の時。沖縄の食文化について報告された。その後、壊されようとしている聖地を巡る旅をして、名著『揺れる聖域』という一書にまとめた。今や開発はますます進み、破壊されてしまった聖域と化している。しかも、沖縄島どころか宮古、八重山に亘るあちこちの小さな美しい島々に、今やミサイルも配備され、自衛隊が駐屯し、琉球弧全体が、基地の島と化してしまった。
▼その後体調を崩されていた卒寿の川満信一大詩人や昨年出版した『復帰五〇年の記憶』の表紙を飾っていただいた友人、ローゼル川田さんらと現在、過去、未来の沖縄、日本、世界にまで話は及び深夜まで続いた。翌日は、昨年ワクチンの副作用で、突然ギランバレー症候群になり、数カ月の入院後、ようやく動けるようになった、沖縄の草分けシンガーソングライターの海勢頭豊氏と会った。体調は大分回復されてきたようだ。その夜、石垣島に飛び宿をとった。
▼翌日、石垣から高速艇で、西表島に渡り、昨年急逝した石垣金星の供養に。金星氏とは、我われが、2008年から10年間、離島の方々と毎年春秋、車座で夜を徹しての宴を〈ゆいまーる琉球の自治〉と称して催してきたが、その時の主要メンバーの1人であった。先の3人、川満、海勢頭、安里各氏も然り。その後、竹富島での、岡部伊都子生誕100年の「月桃忌」に招ばれ、お話をさせていただいた。その後、石垣島に戻り、昨年亡くなられた琉球大学名誉教授、川平成雄氏の供養に。その後、「白保の海を守る会」の時から中心的に活動され、今なお“石垣をミサイル基地にするな”と反対闘争をしておられる85歳になる山里節子さんにお会いした。3泊4日の駆け足の旅ではあったが、久しぶりの沖縄行が、拙に活力を与えてくれたようだ。ありがとう。合掌(亮)

4月号目次

■『中村桂子コレクション  いのち愛づる生命誌』完結
中村桂子 「生命誌」という総合知を創る
永田和宏+中村桂子 生命誌研究館と私たち

■ブラームスを通して歌う「近代への挽歌」
新保祐司 ブラームス・ヴァリエーション

■近代日本は、誰によって、どのように作られたか
近代日本を作った一〇五人 編集部

〈新連載〉小澤俊夫 グリム童話・昔話 昔話は“時間的文芸”  
     山折哲雄 いま、考えること 「大統領」とは… 
     黒井千次 あの人 この人 おかしな同級生
     村上陽一郎 科学史上の人びと ガリレオ・ガリレイ
     田中道子 メキシコからの通信 フェミニストマーチ

〈連載〉方波見康雄 「地域医療百年」から医療を考える25「無垢の青空」
    山口昌子 パリの街角から4「首相の涙」
    宮脇淳子 歴史から中国を観る40「中ロ関係の始まり」
    鎌田慧 今、日本は48「大江さんを偲んで」
    中西進 花満径85「目の話(2)」

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