2023年01月24日

月刊PR誌『機』2023年1月号 巻頭「未だ知られざるロシアの実態」

 

前号    次号



 

社主の出版随想

▼新年あけましておめでとうございます。今年も精一杯全力で出版に励みたく思っておりますので、ご支援ご協力何卒よろしくお願い致します。
 今年も出版業界は厳しい年になりそうだ。この数年毎年のように売上げは下降線をたどっている。本を読まないのか、読むに足る本がないのか、本に支出する金がないのか? 購買者の財布のヒモは固く閉じたままだ。新聞業界も相当厳しいようだが、我が出版業界も、日に日にやせ細ってきている。何とか成って欲しいと祈るばかりである。こんな時代だから、元気が出る本を出しているつもりだが、読んでもらえないと元気になってもらいようがない。
▼作家、詩人、思想家の石牟礼道子が亡くなってもうすぐ早や5年が経つ。昨年暮れに、彼女の仕事の協力者だった渡辺京二氏が享年92でこの世を去った。前日まで机に向かっていたそうだから大往生だったらしい。氏とは、『石牟礼道子全集』刊行の時からだから、たかだかこの20年のお附き合いといって良い。ただ、拙の学生時代から雑誌『暗河』などで健筆を揮っておられたので、一読者としてこの半世紀、蔭ながら氏の仕事は見てきたつもりだ。’88年、幻に終わった『清水幾太郎著作集』の解説を快く引き受けていただいた時が、初めての肉声での対話だった。
▼氏には『全集』刊行に多大なる協力を戴いた。その刊行中、何度も石牟礼宅にお邪魔したが、その折、必ず渡辺さんが足を運ばれた。その石牟礼さんの仕事の周辺をテキパキと片付けておられる様子を見て、この方は、高群逸枝と橋本憲三夫妻の、橋本憲三の役割を買って出ておられるのかな、と思ったこともある。とにかく石牟礼道子専属の編集者の役割を見事にこなしておられるように感じた。その渡辺さんから『全集』本巻完結時に「新たな石牟礼道子像を」という一文を戴いた(『環』53号、2013年春)。今それを読み返してみると、この方は、やはりこの『全集』の最大の良き理解者であったことがわかってくる。
 「この度の『石牟礼道子全集』の刊行は、いまだ評価未確定の文業の真価を、初めて包括して広く世に知らしめるという、普通の全集よりずっと積極的な、冒険的な企図の上に立つものではなかったろうか。事実、石牟礼道子という近代日本文学史上真に独創的な作家に対する社会的評価は、……『全集』刊行中に著しく上昇し、確定したように思われる」と。合掌(亮)

1月号目次

■ウクライナ侵攻から“ロシア”を考える
未だ知られざるロシアの実態 宮脇淳子

■関東大震災百周年記念出版
震災復興はどう引き継がれたか 北原糸子

■アイヌの探究と苦闘を追体験
アイヌの時空を旅する 小坂洋右

■『高校生のための「歴史総合」入門』第二弾
欧米の「近代」に学ぶ 浅海伸夫

■民衆の声を聞き取った第一級資料
マルクスが『共産党宣言』を出版した1848年とはどういう時代か? D・ステルン

〈新連載〉パリの街角から「戦時下のパリ」 山口昌子
〈連載〉「地域医療百年」から医療を考える22「取り合わせの医療」 方波見康雄
    歴史から中国を観る37「チベットと日本の古い関係」 宮脇淳子
    今、日本は45「原発の犠牲者たち」 鎌田慧
    花満径82「天皇即神の思想」 中西進

12・2月刊案内/読者の声・書評日誌/刊行案内・書店様へ/告知・出版随想