2022年12月22日

月刊PR誌『機』2022年12月号 巻頭「核分裂後の化学的毒性物質テルル――原爆/核実験/原発被害者たちの証言から」

 

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社主の出版随想

▼中国の発展は言うに及ばず、東南アジア諸国の経済発展は凄まじいものがある。このままでは、わが国は経済大国どころではなくなるのもそう遠い日ではあるまい。 ▼十数年前に、アメリカや日本について、エマニュエル・トッドは、“自由主義ではなく保護主義を!”“自由貿易ではなく保護貿易を!”と提唱した。彼は、19世紀の歴史学派の泰斗、フリードリヒ・リスト(1789-1846)に着目し、リストの主著『政治経済学の国民的体系』(1841)を仏で復刊する時の長い序文を書いた。(『自由貿易という幻想――リストとケインズから「保護貿易」を再考する』(2011)の「序文」を参照)トッドはここで、「自由貿易による世界規模の需要縮小こそ、世界経済危機=デフレ不況の真の原因。『自由貿易』と『保護貿易』についての誤った通念を改めることこそ、経済危機からの脱却の第一歩である」と、リストの保護貿易、保護主義についての発言の重要性を説く。わが国では、その後に現れたマルクスの説を戦後の経済学者らは取り入れ、“自由”という名称に引きずられ、“自由貿易”がのさばってきた。アメリカも同様で大国になった。自国の産業を自らの手で育てない自由貿易では国が衰退する。わが国では特に第一次産業軽視が、戦後長く続き今日に至る。食糧自給率は、40%を切っている。トッドは、アメリカの衰退の下、保護主義を唱えたトランプの政策に賛意を評した。日本政府は、アメリカはすぐ抜けたにも拘らず、環太平洋パートナーシップ(TPP)協定を促進していった。これからこのTPPがどうなってゆくのだろうか。 ▼2022年も、コロナ禍の対応で一年の終わりを告げそうだ。ロシアのウクライナ侵攻に始まり、ヨーロッパは、またまた20世紀前半を想起させるような緊張感に包まれているが、この戦争という勝者も敗者も無惨な失望感に苛まれるものから、人類は、脱け出すことができないものだろうか。何百年、否何千年も殺し合いを続けてきた人類の歴史。人類以外の生き物を絶滅させても、この生産性のない戦争から脱出できないでいるのは何故だろうか。合掌(亮)

12月号目次

■原爆、核実験、原発の被害を貫く物質を発見
核分裂後の化学的毒性物質テルル 山田國廣

■自由を許さない共産党政権への「白紙」抗議
「友好」のエレジー 王 柯

■民衆の声を聞き取った第一級資料
女がみた一八四八年革命 志賀亮一

■“日本型食生活”崩壊の原点に迫る名著、新版
「アメリカ小麦戦略」と日本人の食生活 江崎道朗

■美術商・林忠正の軌跡 高頭麻子

■『祈り』、日本詩歌句随筆評論大賞(随筆部門優秀賞)受賞 濱田美枝子・岩田真治

■映画「大地よ」完成! 金大偉(映画監督/音楽家)

〈リレー連載〉近代日本を作った100人105(最終回)「添田啞蟬坊――近代流行歌の祖」 土取利行
〈連載〉「地域医療百年」から医療を考える21「小さな音に学ぶ」 方波見康雄
    歴史から中国を観る36「満洲に来たロシア人の運命」 宮脇淳子
    今、日本は44「防衛力強化と増税」 鎌田慧
    花満径81「吉野ハレルヤ」 中西進

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