2022年04月22日

月刊PR誌『機』2022年4月号 巻頭「ウクライナ侵攻の真実」

 

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社主の出版随想

▼コロナ禍の時代。以前の平和な時間がいつ訪れるかも予測不能の時代。今、われわれ人間は、人間以外の生き物に、容赦ない攻撃を無自覚に日々加えながら、便利さ快適さを貪欲に追求している。20年に亘るアフガン戦争が終るや、こんどはウクライナ戦争…とまだまだ人間の覇権争いは止まるところを知らない。
▼この半世紀あまり、強国に支配されていた植民地が独立国となった。しかしすぐに、民を支配する強者が現れ、弾圧、強圧の下で暮らしを余儀なくされている国も多い。支配―被支配の関係を人間は克服することはできるのであろうか。その中で、「平和」を求めることは、絵空事のように見えるが、毎日のように“平和”という文字がマスコミに踊らない日はない。科学及び科学技術の進歩によって、高度な科学技術がいつの間にか、世界の隅々まで、支配するようになった。この2、30年の間に。戦争も暮らしも以前と全く姿を変えてしまった。
▼わずか100年前に想いを馳せると、当時は、「欧州戦争」と云われた第一次世界大戦後。日本も漁夫の利を得て、パリ講和会議に出席。世界の列強に仲間入りしたが、牧野伸顕による「人種差別撤廃」の演説も、逆に反感を買う始末。小さな大国日本は、どんどん窮地に追い込まれてゆく。その後、アメリカから厳しい制裁・弾圧を受け、「排日移民法」(1924)が制定され、両国の関係は悪くなっていった。当時のアメリカ全権大使・埴原正直は、その法に異議を申し立てたことで、更迭され帰国となる。その数年後に亡くなった。
▼高度なハイテク時代。数日も経ることなく、わずか瞬時に世界で起きた出来事が伝わる。換言すれば、情報の氾濫社会。どの情報が正しいかを自分で選択する能力が問われる。大事なのは、その情報がどこから発信され、かつその情報源は信頼していいのかを調べることだ。今のウクライナ戦争情報も、殆ど西側、NATO、アメリカからの情報ばかり。100年前は、テレビはおろか、ラジオもなかった。この国にラジオが導入されたのは1925年3月。まだ100年も経っていない。現NHKの前身東京放送。因みに、初代総裁は、後藤新平であった。(亮)

4月号目次

■ウクライナ侵攻の真実
エレーヌ・カレール=ダンコースのロシア及びプーチン論 山口昌子
日本の対露認識の問題点と、問われる日本政府の見識 袴田茂樹

■都市研究の第一人者による『都市と文明』完結
P・ホールの「都市論」とは? 佐々木雅幸

■『九千年の森をつくろう!』出版
宮脇昭博士との小さな旅 S・シャルマ

■ニーチェとの格闘の集大成『格闘者ニーチェ』完結
ニーチェは、何と格闘したのか 清 眞人

〈リレー連載〉近代日本を作った100人97「上野彦馬――「近代化」を活写した長崎人」 姫野順一
〈連載〉「地域医療百年」から医療を考える13「地域で「尊厳死」を看取る」 方波見康雄
    歴史から中国を観る28「チベット仏教僧となった南宋最後の皇帝」 宮脇淳子
    今、日本は36「ロシアの「マクドナルド」」 鎌田慧
    花満径73「化熊は韓国経由か」 中西進
    『ル・モンド』から世界を読むⅡ―68「EHPAD」 加藤晴久

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