2022年03月24日

月刊PR誌『機』2022年3月号 巻頭「公衆衛生の「再生(ルネサンス)」」

 

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社主の出版随想

▼もう3月になったというのに、まだ寒い。異常気象がもたらすものだろう。東京では、梅は満開、桜の蕾もふくらみ始め、20日すぎには花開く予報である。この頃は、いつも胸ワクワク心躍る時である。が、コロナ禍の継続でなかなか心晴れる日は訪れそうにない。
▼ここに来て、ロシアの「ウクライナ侵攻」が始まった。世は挙げてプーチン批判、誹謗中傷の大合唱、しかも連日連夜。世界がロシア批判一色。このところ世界が狭くなったせいか、“情報”はすぐに世界を駆けめぐる。しかも、力の強い者の情報が。確か、20年前の9・11事件の時とよく似ている。あの時も、アルカーイダによる「同時多発テロ」という言葉が一瞬にして世界を駆けめぐり、アメリカのアフガニスタン侵攻ということになった。戦後最長の20年に及ぶ長い長い戦いの泥沼に入っていった。その間イラクのフセイン大統領の核疑惑による殺戮。これはTVで逮捕劇をドラマを見るかのように放映したが、その後、アルカーイダの主犯ウサマ・ビン・ラディンを殺戮したと発表。これは、米主脳らが映像を見ている姿は映されたが、フセインのような逮捕中継を見ることはなかった。しかし、全世界の国民は、アメリカからの報道で、この事実を今のところ信じているのだろう。
▼情報化社会の怖しさは、言を俟たない。がこの情報を流すか。どういう手段で、どういうメディアで。現在のように誰もが信用していたメディアが、ある状況の下、作り話であったということも昨今、枚挙に暇なしだ。権威と思われていたものが、実は中身は空洞であったという。日常茶飯の光景である。
▼アイヌの詩人、宇梶静江は、「カムイが見ている」、「カムイが降りてきた」という言葉をよく使う。天草、水俣の詩人、石牟礼道子は、「祈るべき天とおもえど天の病む」というを残している。カムイ、天、神も、今や病膏肓(こうこう)に入ってきているのだろうか。これからの時代、何を信用していいかわからぬと言っても過言でない。ならば己れを信じて生きてゆくしかないではないか。そのためには、己れの内実を、日々、磨かねばならぬ。一日一日の稽古を、疎かにしないということだ。批判的精神の研鑽。日々精進。最後に、後藤新平の「自治三訣」で締め括りたい。
一、人のお世話にならぬよう
一、人のお世話をするよう
一、そしてむくいを求めぬよう
(亮)

3月号目次

■何の対策も講じてこなかった戦後日本
公衆衛生の「再生」 三砂ちづる

■世界中で実践されている「宮脇メソッド」の森
ふるさとの木によるふるさとの森づくり 宮脇 昭

■幻の詩集『日本風土記Ⅱ』がいよいよ刊行
今、『日本風土記Ⅱ』を出版する 金時鐘

■著者のニーチェ論の集大成!
格闘者ニーチェ 清 眞人

■民俗学・観光学・女性学を横断する、気鋭の野心作!
旅館おかみの誕生 後藤知美

■パリから観た激動の三十年、「世界史」が生まれる瞬間の鮮烈なドキュメント
パリ日記Ⅲ シラクの時代2 山口昌子

〈リレー連載〉近代日本を作った100人96「アーネスト・サトウ」 佐野真由子
〈連載〉「地域医療百年」から医療を考える12「地域で共に「生涯」を診る」 方波見康雄
    歴史から中国を観る27「漢字文化圏でなかった「西域」」 宮脇淳子
    沖縄からの声XV―3(最終回)「石垣島の自然環境を次世代へ」 川平成雄
    今、日本は35「「東京に空が無い」」 鎌田慧
    花満径72「変幻自在のカミ」 中西進
    『ル・モンド』から世界を読むⅡ―67「自然=文化遺産」 加藤晴久

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