2025年07月25日

月刊PR誌『機』2025年7月号 巻頭「敗戦後、日本の国の形を示した遺著――幻の書『国史より観たる皇室』」

 

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社主の出版随想

▼敗戦から80年がもう間近かになってきた。戦後ではなく、敗戦後である。8月末には、マッカーサー以下連合国軍が日本占領の為に、厚木に到着した。敗戦国日本は、夜の接待のために東奔西走して、横浜に女性を集める。それから約6年半、52年春まで敗戦国日本の制度やシステムが占領軍の指揮下で、決定されていった。民主化の名の下に、戦勝国が敗戦国を裁く東京裁判はもとより、日本国憲法、教育改革、農地改革、財閥解体、等々が。体裁上植民地化は免れたものの、主体、主権なき国家といっても過言ではない。
▼敗戦後すぐにこの世に生を受け今日に至るわれわれに教えられたことは、「暗い戦前」であり、「侵略・略奪の限りを尽した悪い国、日本」であった。
 今でも記憶にあるが、小学校時の学校給食のことである。家では、米に一汁一菜の食事であるが、学校では、パンに脱脂粉乳、それにおかず一つ。なんかまずい物を食わされてるなという思いはあったが、後年、戦後の「アメリカ小麦戦略」の真実を知らされ、アメリカという国の恐ろしさがわかった。食糧がない当時の日本人の食生活を変えるためには、小さい時から子どもの舌を変えれば十分。当時のアメリカは、小麦が過剰で、道路に撒く程あり余っていた。これを無償で日本に供与して、学校給食として与えれば一石三鳥になると、この本に書かれていた。
 このアメリカの占領政策は、今のトランプ大統領の「アメリカファースト」ではないが、その敗戦後からずうっと続いてきている。食だけではない。衣にしても、戦前、日本の輸出高の八割近くを占めていた絹織物業が、戦後、アメリカの化繊・合繊のナイロンなどの輸入により絹は一掃されてしまった。住にしてもしかり。つまり衣食住すべてが、敗戦後、一変してしまうことになったのである。
▼敗戦後80年という3世代あまりの長い歳月を振り返ると、われわれがいかに主体性を奪われた生活を余儀なくされてきたかがわかる。今やこれを元に戻すことは難しい。できないかもしれないが、何故今のような暮らしにならざるを得なかったかを考えることはできる。
 われわれの先人は、貧しくても立派な人間は多かった。黒船来航から170年余。敗戦前の80年間に、どれだけの偉人が誕生し、この日本を自立、独立する国に育てあげてきたか。今一度、敗戦前の80年を再考しようではないか。(亮)

7月号目次

■幻の書、徳富蘇峰『国史より観たる皇室』刊行
所 功 「『頑蘇夢物語』に見る敗戦直後の徳富蘇峰」
徳富蘇峰 「『国史より観たる皇室』より」

■『後藤新平論集』解説より
伏見岳人 「後藤新平の語る仕事の流儀」

■追悼・玉井義臣さん(あしなが育英会会長)
玉井義臣 「遺児の心の叫びを聴け――『玉井義臣の全仕事 あしなが運動の六十年』Ⅴ」

〈連載〉叶 芳和 日本ワイン 揺籃期の挑戦者15「ワインは人を呼ぶ」
    山口昌子 パリの街角から31「ウーアルカイシとの邂逅」
    田中道子 メキシコからの通信28「民選司法官制度の発足」
    宮脇淳子 歴史から中国を観る67「日本でアルタイ学が盛んなわけ」
    鎌田 慧 今、日本は75「ラストベルトの居酒屋」
    村上陽一郎 科学史上の人びと28「武谷三男」
    方波見康雄 「地域医療百年」から医療を考える49「私の『プライマリ・ケア医療方法序説』(1)」
    中西 進 花満径112「漱石と現象学」

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