2025年11月26日

月刊PR誌『機』2025年11月号 巻頭「白川静と石牟礼道子の未公開往復書簡、初公開」

 

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社主の出版随想

▼1980年代初頭、まだ30歳台の前半だった。ある世界的思想家と出会った。70年代彼は、高度な産業社会の三大サービスシステムにメスを入れた。教育制度としての学校、医療制度としての病院、輸送システムとしての交通・エネルギー。このサービスシステムの肥大化、巨大化が人間を非人間化していくことの陥穽を説き、大量生産、大量消費化してゆく未来に警鐘を鳴らした。われわれはどこに向かってゆこうとしているのかと。その後彼は、性(ジェンダー)、労働(シャドウ・ワーク)、言語(アミーバーワード)、身体、などという人間の根源に遡る思索に埋没した。80年代、『シャドウ・ワーク』『ジェンダー』『ABC』『H2Oと水』などの作品を次々と発表していった。
▼生前最後の出会いは、86年晩秋、初めての2ヶ月の長期滞在で国連大学に招かれた時だった。殆どオブリゲーションなしで、日本をあちこち見たいと言っていた。マスコミは完全にシャットアウトし、拙の要望だけ受け入れてくれた。三つの対談と三つのゼミナール。対談は、吉本隆明、網野善彦、石牟礼道子の各氏。ゼミナールは、身体、言語、水をテーマに。世界の最先端の思想家との直の討論で、一回一回が大変な緊張感の中で進められた。石牟礼道子さんとの対話は、すばらしいものになった。国境を越えた二人の詩人の出会いである。『椿の海の記』の英訳は事前に渡していた。感性や情感が響き合う対話だった。もちろん活字にした。
▼イバン・イリイチは、離日にあたり「私には、『破滅は切迫している』という緊張感がある。自らの生活の中で大変犠牲を払いながら緊張した生活をしてこの破滅に抵抗している多くの人を知っている。彼らの闘いは、多くの欧米人が想像できない孤独の中で行われている。そうした方々に深い敬服の念を抱いている。絶望はしていない」と。
 最後に、ユダヤの古い“十二人の賢人”の教えを語った。(亮)

11月号目次

■白川静と石牟礼道子の未公開往復書簡、初公開
白川 静・石牟礼道子 「二人の書簡から」
白川 静・石牟礼道子 「〈対談〉日本語とは」
笠井賢一 「二人の出逢いと、新作能『不知火』の衝撃」

■「新しい伝統」を作りだす、八重山からのメッセージ
石垣昭子 「『手仕事』の復興を!」
三砂ちづる 「手仕事の復興、美しいものの追求」

■“幻の世界初女性領事”、ダイアナ・アプカー
メスロピャン・メリネ+太田阿利佐 「日本に生きた〈ディアスポラ〉」

■〈特別寄稿〉タチアナ・ネチタイロ司祭の訪日
内田純一 「ウクライナの今」

〈連載〉山口昌子 パリの街角から35「ルーヴル美術館強盗事件」
    田中道子 メキシコからの通信32「シェインバウムの4T」
    宮脇淳子 歴史から中国を観る71「最後のモンゴル遊牧帝国ジューンガル」
    鎌田 慧 今、日本は79「永山則夫の不幸」
    村上陽一郎 科学史上の人びと32「アインシュタイン(承前)」
    中西 進 花満径116「隣座敷の時計」

■『ゾラ・セレクション』日本翻訳出版文化賞受賞

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