2003年04月01日

『機』2003年4月号:マニフェスト 個別大学の「改革」から大学界の「改造」へ アレゼール・日本

前号   次号


個別大学の「改革」から大学界の「改造」へ
 いま各地で進められている「改革」に決定的に欠落しているのは、日本の高等教育と学問・研究の将来に対する責任を負う存在として、それらの「改革」を通してどのような大学界を将来へ向けて作り出していくのかをめぐる、グローバルなビジョンである。学問・研究の未来をいかに切り開いていくのか。大学という空間を通して、なにを可能としていくのか。大学を、だれに、どのように開いていくのか。大学はいかなる役割を担っていくのか。そして、そのような将来を可能としていくために必要な条件とは何なのか。私たちが追求しようと考えているのは、日本の大学界を作り変えていく、そのような本当の「改革」である。そのためには、日本の大学が総体としておかれている状況をグローバルに捉え返し、それが構造的に抱えている問題を摘出することが欠かせない。私たちの運動とは、まさにそのような本当の「大学改革」、つまり、日本の高等教育と学問・研究の展望を切り開くことを可能とするための、大学界それ自体の「改革」にむけた、大学関係者の総力を結集するための運動にほかならない。
 私たちは、日本の大学関係者がこれまで、大学界の将来をめぐるグローバルなビジョンを作り出すことができなかったことの一番の原因は、大学関係者が徹底的に分断されていることにあると考えている。国立/公立/私立といった分断や大学間格差のみならず、大学内部も専任教員、非専任教員、大学院生、学生、職員らへと分断され、さらに外国人教員や留学生の存在、女性教員をめぐる諸問題が事態を複雑にしている。各大学で進められている「改革」は、そのような分断された構造を前提とし、そのことを不問としているがために、大学界にかかわるあらゆる人々がその将来をめぐるグローバルなビジョンを共有し、本当の「改革」を遂行すること不可能としている。私たちは、大学界を貫くそのような不平等構造をこそ乗り越え、大学界にかかわるあらゆる人々の共同した取り組みとして「大学改革」を構想していく必要があると考えている。

(「第1部まえがき」より 構成・編集部)