2002年07月01日

『機』2002年7・8月号:生命中心主義の文明構築を! さがら邦夫

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リオ地球サミットから十年、地球温暖化の現状と米国の独善行動を問う!

京都議定書からの離脱
 自由と民主主義を二十世紀に世界へ広めたアンクルサムの勇姿は、過去一千年間に前例のないほど気温が上昇した「地球温暖化」の対策をめぐって、突如豹変し、色あせた。ブッシュ米大統領が、昨年三月、先進国の義務である「京都議定書」からの離脱を宣言した“椿事”は、アメリカの経済至上主義と技術依存の浪費文明の行き詰まりを予兆させる。
 広く環境問題の対策は、十九世紀から自然環境を元のまま「保存」するのか、適切な開発は認める「保全」との間で揺れ動いてきた。いま世界では「持続可能な開発(発展)」が、統一スローガンとしてもてはやされている。だが、経済にウエイトが置かれているのが現状だ。この八月末、「ヨハネスブルク地球サミット(持続可能な開発に関する世界サミット)」が開催され、今後の環境と開発の戦略が決まる。前回のリオ地球サミットで決まった、二十一世紀に向け世界が取り組む「アジェンダ」行動計画は、その後十年経ってもほとんど実行されておらず、人類の将来は明るくない。
 ヨハネスブルク地球サミットの呼び物である「京都議定書」の発効は、欧州連合(EU)十五か国と日本の批准により弾みがついたが、ロシアやカナダ、豪州などがアメリカの顔色をうかがって実現が延び、画竜点睛を欠くことになった。



三〇%の排出量増加?
 国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、最新の第三次評価報告書で、過去二十万間で大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度が最高に達し、二十一世紀末までに地球の平均気温が最高六度近く上昇すると警告した。世界の第一線の科学者約二千人がまとめた結論を、ブッシュ氏は主に国内経済への打撃と京都議定書の科学的根拠に対する疑問を挙げて拒否した。世界最大の二酸化炭素(CO2)排出国であるアメリカは、二〇一〇年には温室効果ガスの七%削減どころか、逆に三〇%以上も排出量が急増し、議定書の実行が不可能なので“敵前逃亡”したのである。

浪費経済と大量廃棄文明こそ問題
 問題の核心は、地球の環境破壊と資源枯渇を食い止めることにあり、世界に普及させた浪費経済と大量廃棄文明をアメリカ自身が率先して抑制し、環境と両立する持続可能な新しい経済システムを構築できるかどうかにかかっている。現状では、アメリカにはその実現は不可能である。なぜなら、グローバル化の大義の下に、消費と欲望を美徳化して、世界への消費市場経済の拡大をやめようとしないからだ。
 ヨハネスブルク地球サミットでも、消費の抑制が重要な議題となる。地球環境問題対策の最大の矛盾は、浪費経済を是認したまま、消費の抑制をはかるという全く相容れない課題を同時に進めていることにある。これは水道の蛇口を開いたまま、節水をするようなものだ。アメリカの矛盾はまさにこの点にある。京都議定書は、先進国が温室効果ガスの削減に着手するという点では画期的な条約だが、各国の目標達成のための国際的な仕組みとして市場経済の原理を重視し過ぎている。
 温暖化対策で、アメリカは地上には消滅したフロンティア(辺境)を科学・技術至上主義のうちに追い求める方向に転換し、技術開発により温室効果ガスの削減が可能だと確信している。それだけでなく、投機対象の乏しくなったアメリカの市場経済は、空気の成分である二酸化炭素の排出量(権)取引市場の開設に向け、動きが本格化している。アメリカの地球温暖化対策は、フロンティアを追求し続けてきた進取のアンクルサムが、独善の退嬰に成り下がったことに他ならない。二十一世紀のフロンティアは、市場経済と科学・技術を偏重した人間中心主義の文明ではなく、生態系を守る生命中心主義の文明の構築にあるのである。