2018年09月22日

竹下しづの女 理性と母性の俳人 1887-1951

9/22 日本経済新聞

 竹下しずの女(1887~1951年)は昭和期の女性俳句の先駆けとされる俳人だ。俳句の定形性と内的表出の両立を模索し、知的な作風を打ち立てた。本書はその評伝で、知と情を併せ持った表現者の歩みを丹念にたどっている。
(中略)
 しずの女は「俳句を複雑化したい」と語り、様々な修辞を試みつつ屈折する心を17音に刻みつけた。夫や息子の死、職業婦人としての労苦、嫁との確執などの経験が、強烈な私性として表現に発露していったのだろう。人生の難事に立ち向かいながら理想を求め続けた姿には、感動を禁じ得ないはずだ。著者は英文学者。こちらも知と情のバランスのいい書きぶりで、行き届いた評伝に仕上がった。。