2018年08月25日

竹下しづの女 理性と母性の俳人 1887-1951

8/25 西日本新聞 【今川英子氏】

 しづの女は福岡女子師範学校を卒業、教師となるが結婚後退職。5人の子どもの母となるも夫が急逝後は図書館に勤め、家族を扶養しながら俳句と評論を書き、学生を指導。戦後は食糧難のため農業に従事した。本書はその生涯と作品を確かな資料で丁寧に追い、俳句に理性を求め、生活者として戦中戦後を生き抜いた骨太の女流俳人を見事にあぶり出している。また長男龍骨らが結成し、のちの金子兜太も参加する高校学生(のち学生)俳句連盟の機関誌「成層圏」の創刊から休刊までの詳述は、俳句史上の上からも貴重である。
 作品についての的確な解説と評価など、俳人である著者の創作者としての鋭い視点と、学者としての外部からの客観的視点、さらに同性として著者の内部から噴き上げる共感の視点の三つが縦横に駆使され、しづの女の俳句世界の全容を解明、俳人としての軌跡に肉迫している。