2021年10月21日

『感情の歴史』(全3巻)遂に完結!

この度、アラン・コルバン、ジャン=ジャック・クルティーヌ、ジョルジュ・ヴィガレロが監修した『感情の歴史』(全3巻)の邦訳が、遂に完結いたしました。

これにより、『身体の歴史』(全3巻)『男らしさの歴史』(全3巻)から続いた三部作の邦訳が全て出そろったことになります。

“感性の歴史家”アラン・コルバンが中心となって編纂されたこの三部作の掉尾を飾る『感情の歴史』は、アナール派の始祖の一人であるリュシアン・フェーヴル(1878-1956)により、1930年代から主張されてきた「心性史」を継承するものであり、『感情の歴史』の「総序」(コルバン、クルティーヌ、ヴィガレロの3名が連名で記したもの)にも、フェーヴルの以下の言葉が引用されています。

われわれは欠けている一連の研究に着手できると思う。その研究が欠落しているかぎり、歴史学など存在しないだろう。われわれには愛の歴史がない[…]。死の歴史も、憐憫の歴史も、残酷さの歴史もない。喜びの歴史もない。(L・フェーヴル「感性と歴史」『感性の歴史』小倉孝誠・大久保康明・坂口哲啓訳、藤原書店、1997年、65頁)

今回完結した『感情の歴史』は、「感情資本主義」や「感情の共同体」など、現代思想の諸問題と切り結ぶ歴史学の一大成果であるとともに、「感情史」という広大な未開拓の沃野への誘いに外なりません。人は生きている限り感情の中にあり、それは無限の変転を示すといっても過言ではないでしょう。そして、フェーヴルに言わせれば、その沃野を離れては歴史学など存在しないに等しいのです。

人間の存在、人間の歴史に少しでも関心を寄せられる方は、本書を手に取り、どのページからでも構わないので繙いてみてください。そこには人間の偉大さと愚かさ、美しさと醜さ、そして、喜びと悲しみの諸相が様々な観点から描き出されているのを見出すことができると思います。

今回完結した『感情の歴史』の邦訳書は、小倉孝誠氏、片木智年氏という、練達のお二方を監訳者に据え、藤原書店が自信をもってお届けするものです。

▶『感情の歴史』内容見本

  

なお、先に引用したL・フェーヴルの「感性と歴史」は上記に出典を記載した『感性の歴史』以外に、2010-2017年にかけて小社で刊行した叢書『アナール 1929-2010――歴史の対象と方法』の第Ⅰ巻にも井上櫻子氏の訳で収録されています。

同論文は、『感情の歴史』へと連なるアナール派歴史学の血脈を理解するために、欠くことができない、L・フェーヴルの最重要論文の一つということがきます。

これを機会に、アナール派歴史学の奥深い広がりと、その方法論に触れてみたいと思われた方は、ぜひ、これらの書もお手にとってみてください。