フェルナン・ブローデル

「アナール派を代表する歴史学の巨人」フェルナン・ブローデル(Fernand Braudel、1902-1985)

ヨーロッパ、アジア、アフリカを包括する文明の総体としての「地中海世界」を、自然環境・社会現象・変転きわまりない政治という三層を複合させ、微視的かつ巨視的に描ききった20世紀歴史学の金字塔『地中海』を著した「アナール派」第二世代の総帥ブローデル。
戦時捕虜という過酷な境遇の中から『地中海』を立ち上げたブローデルは、1949年にはコレージュ・ド・フランス教授に就任。1956年のリュシアン・フェーヴル死後は雑誌アナール(『社会経済史年報』)の編集長に就任するとともに、高等研究院第6部門の責任者となって、フェーヴル亡き後のアナール学派の中心的存在として数多くの人材を育て、また、歴史学と隣接諸科学の交流に大きな役割を果たす。
国民国家概念にとらわれる一国史的発想と西洋中心史観を“ひとりの歴史家”として脱却しただけでなく、社会科学高等研究院第6部門や「人間科学館」の設立・運営をとおし、人文社会科学を総合する研究者集団の《帝国》を築きあげた不世出の巨人。
ブローデルがその巨大な著作において提示した「長期持続」や「全体史」というヴィジョンは、まさに「フランス現代思想」という知的革命の源流の一つである。