2026年04月27日

月刊PR誌『機』2026年4月号 巻頭「白川静・石牟礼道子『言霊の舟』を読む」

 

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社主の出版随想

▼この1ヵ月の慌しさといったらなかった。それは、1月のフランス政府からの芸術文化勲章オフィシエの受章から続いていた。1月31日には、友人たちがお祝いの会を開いてくれた。思いがけなく大勢の人が駆けつけてくれ会場は人で溢れた。しかも、韓国から尊敬する詩人の高銀夫妻まで参会して戴き、恐れ入った次第だ。沢山の友人に囲まれた一夕、後半は、八重山から参加してくれた三砂ちづるさんが琉球舞踊を有名な三線奏者の生演奏で披露。又、後藤新平の作詞による「大國民之歌」もおそらく本邦初演と、会場を華やかに飾っていただいた。スピーチも、遠路水俣からお越し戴いた加藤タケ子さんはじめ、前アルメニア大使のポゴシャンさんや石牟礼道子の畢生の大作『春の城』を昨年秋に英訳されたブルース・アレン氏らユニークな顔触れからも戴いた。最後は、狂言方の人間国宝山本東次郎師による狂言小歌『猿聟』で締めて戴いた。こんな幸せがあっていいものか、と皆さんのお祝いいただいているお顔を拝見している内に瞬く間に3時間は過ぎていった。
▼その後も、ラジオ深夜便「明日へのことば」の出演も決まり、4月2日早朝4時から放送された。さすがNHKという巨大組織マスコミで、リスナー200万ともいわれるが、大きな反響があり今も続いている。9日の「チャンネル桜」にも出演した。あまりこういうメディアには出る機会がなかったが、新聞、ラジオ、ユーチューブ等への登場の機会をこの歳になって戴き、身辺は慌しい。(笑)
▼後藤新平は、遺言として「財を残すは下、仕事を残すは中、人を残すは上」「一に人、二に人、三に人」という名言を遺している。我々が生きていく中で、お金が必要なことは言うまでもない。しかし、われわれが、そのお金やAIの奴隷になっていいものか。われわれ人間が作り出したもっとも画期的な物がお金であることは間違いない。しかしそのお金に跪いて多くの犯罪が日夜絶えることがない程、人心はこの黄金の輝きに魅了されているのかも。このことを考えると、20歳過ぎに日々読み耽った若きカール・マルクスの『経哲草稿』(1844)の「貨幣の章」を思い起こす。シェークスピアからの引用だ。「いまいましい金属め、おまえは人間の共通の娼婦だ。諸国民を攪乱させるやつだ」と。400年以上も前からこの黄金の輝きは、人間を悩ませる物なのだ。(亮)

4月号目次

■白川静・石牟礼道子『言霊の舟』を読む
笠井賢一 「新作能『不知火』、新作狂言『なごりが原』を次世代につなぐ」

■胎児性水俣病の方々の声、寄り添ってきた人々の歩み
加藤タケ子・野澤淳史 「「宝子」の叫び」

■日本のアジア認識を捉え返す名著、増補新版刊行!
子安宣邦 「一国的歴史を乗りこえる」

■中内敏夫の教育原論三部作、普及版刊行!
太田素子・木村 元 「今甦る『「教室」をひらく』」

〈連載〉山口昌子 パリの街角から40「日本は国民国家か」
    田中道子 メキシコからの通信37「「エル・メンチョ」の死」
    宮脇淳子 歴史から中国を観る76「チンギスの男系子孫ではなかったオイラト帝国の太師たち」
    鎌田 慧 今、日本は84「矢野伊吉裁判長の正義」
    村上陽一郎 科学史上の人びと37「クーン」
    方波見康雄 「地域医療百年」から医療を考える56「方波見医院の閉院」
    中西 進 花満径121「ふしぎな永井荷風」

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