2025年04月25日

月刊PR誌『機』2025年4月号 巻頭「現代日本の思想的危機を乗り越えるために」

 

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社主の出版随想

▼相変らず「トランプ劇場」が世界を席捲している。トランプの「アメリカ・ファースト」は変わらないが、今少し、世界の国々との交渉があることだろうからこの動きはもう少し眺めていた方が良さそうだ。
 今年もこの20年余欠かしたことがない後藤新平伯の4・13の命日の墓参に行く。小雨降る青山霊園は、桜も散りかけている。入口の管理事務所の傍のお花屋さんで花と線香を買い、広い霊園を数分歩くと質素なお墓に辿り着く。新平と和子夫人のお墓が並び、その前に後藤家の墓がある。そのお墓の前には台湾産の古い樟が2本立つ。お経を上げ、昨年の報告と今年の予定をお祈りする。
▼今年の墓参で、気がついたことを書き留めたい。1つは、お墓の入り口のネームプレート。「後藤新平 Gotou Shinpei 1857-1929」青の背景に白文字で。辺りを見渡すが、かかってる墓は殆どない。恐らく有名人に、この1年の間に誰かが名札を付けたのだろう。管理事務所で問い合わせたが、はっきりしない。
▼その事務所に、いくつかのパンフレットがあり、「作家篇」「経済人篇」……などの中に「水と衛生篇」があった。もしかしたらと思って中を覗くと、やはり後藤新平があるではないか。心躍らせながら、他の3人に目を通す。巻頭に、「わが国の公衆衛生分野に偉大な足跡を残した人々を取り上げる」「開国を機に、居留地がある横浜などの開港都市で発生した伝染病の流行が、当時不平等条約下で検疫権を持たない日本の大きな社会問題に」なっていた、この青山霊園に眠る公衆衛生向上に重要な役割を果たした4人を取上げる、と。
▼先ず、W・K・バルトン(1856-99)。スコットランド人で87年に日本に招聘。帝国大学工科大学で9年間教鞭を執り、多くの指導的人材を輩出。東京、下関、仙台、名古屋、広島など主要都市の上下水道の調査設計に携わる。又、日清戦争後、後藤新平の要請で、台湾の衛生事業調査や台北、基隆の上下水道の調査設計に当る。又、日本初の高層タワー建築、凌雲閣の設計者としても知られる。他に、「日本近代水道の父」として知られるイギリス人H・S・パーマー(1838-93)、日本における「衛生」の生みの親、長与専斎(1838-1902)、そして後藤新平が、この青山霊園に葬られている。今、彼らは、ここで何を話し合っているだろうか、と夢想させていただいたひとときであった。(亮)

4月号目次

■現代日本の思想的危機を乗り越えるために
渡辺利夫 「福澤諭吉 人生の美学」
新保祐司 「現代の日本を根底から覆す力」

■プラットフォームを「公共」化することは可能か?
平野泰朗 「世界史からみたプラットフォーム資本主義」

■凄惨な引揚げを経験し、その後、国際交流に尽力
加藤仁紀 「満洲引揚げ少年、ブラジル移民となる」

■〈玉井義臣の全仕事 あしなが運動六十年〉第4回配本
玉井義臣 「世界のASHINAGAへ」

〈連載〉叶 芳和 日本ワイン 揺籃期の挑戦者12「データで見る世界ワイン」
    山口昌子 パリの街角から28「東日本大震災から14年」
    田中道子 メキシコからの通信25「「女性の時」の進行」
    宮脇淳子 歴史から中国を観る64「セイロン島で見つかった石碑」
    鎌田 慧 今、日本は72「どなんの海 与那国島」
    村上陽一郎 科学史上の人びと25「クリック」
    方波見康雄 「地域医療百年」から医療を考える46「随想 デカルトと医学」
    中西 進 花満径109「レリーフに包まれる死」

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