2024年07月24日

月刊PR誌『機』2024年7月号 巻頭「ロシア・ウクライナ戦争の予言者」

 

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社主の出版随想

▼この4年半という時間に、世界はまた、人間の手による災害に見舞われている。コロナ禍が、中国の武漢から生じた。それは燎原の火のように、瞬く間に西ヨーロッパ、アメリカ合衆国に広がっていった。感染者も死者も。コロナウイルスはどんどん変異を重ね、すぐに作られたmRNAのワクチンも効果があるかないかの検証も行われないまま月日は過ぎていった。24年7月現在も、周囲でもコロナに罹りましたという声を聴かない日はない。このコロナ禍、ワクチン後遺症で生命を落とされた人は、世界で何人に至るのか?
▼その2年後、ロシアがウクライナに侵攻し、今日に至っている。どれ程のウクライナ市民が犠牲になっているだろうか? しかも、都市や住居の破壊は測り知れない。今月、復刊するH・カレール=ダンコース女史の名著『崩壊したソ連帝国』中にも、ロシアとウクライナの関係は、半世紀前に詳述されている。より近い関係程憎しみ合うのだろう。戦争は、もう900日になろうとしている。現在の戦争は、地上戦ではなく、空爆である。今はドローン攻撃も使われ、多くの人命が失われる。殺し合い、戦いを止めることしかない。非戦の論理だ。
▼人間は、大量殺戮兵器を発明し、開発してきた歴史がある。しかし、それは、前世紀で終りにしようと新しい世紀を迎えたのではなかったか。しかし今世紀に入るや2001年、9・11事件が起きた。アメリカ・ニューヨークで、“イスラムによる同時多発テロ”と報道された事件が暴発し、新たな戦争の時代を迎えた。“宗教戦争”の鎧をかぶっているが、実際は誰が仕かけたか、いまだかつて不透明な事件だ。「ガザ戦争」も昨秋、突然勃発した。現在も進行中だ。
▼こういう戦争の被害者、犠牲者は、いつも決まって力の弱い者たちである。権力者は、権力闘争はいざ知らず、いつも安全な所に居るものだ。この四年半の間に、多くの罪のない市民が犠牲になったが、これからの時代、まだまだ色んな兵器が開発され、多くの人命が失われることになるだろう。現代に生きるわれわれは、今、何を為さねばならないかを真摯に考えねばならぬ時だ。(亮)

7月号目次

■『崩壊したソ連帝国』、待望の増補新版 刊行!
袴田茂樹 「ロシア・ウクライナ戦争の予言者」

■生誕百年記念。幻の未公刊詩集を初出版!
四國 光 「四國五郎が残した幻の「戦争詩」」

S・セーガン 「核 安全性の限界」

■『金時鐘コレクション』第10回配本
細見和之 「詩人・金時鐘の最新作品集」

■追悼 吉井正澄元水俣市長
坂本直充 「対話で開いた新しい水俣」
加藤タケ子 「被害者への謝罪からスタートした元市長」

小澤俊夫 「征爾のこと――兄から弟へ」

〈連載〉叶 芳和 日本ワイン 揺籃期の挑戦者3「塩尻メルローの先駆者」
    山口昌子 パリの街角から19「フランス人のエゴ」
    田中道子 メキシコからの通信16「「第四の改革」は続く」
    宮脇淳子 歴史から中国を観る55「「訓読を玄界灘に投げすてた」」
    鎌田 慧 今、日本は63「味噌と万年筆」
    村上陽一郎 科学史上の人びと16「オッペンハイマー(承前)」
    方波見康雄 「地域医療百年」から医療を考える38「『医療とは何か』―自著註解」
    黒井千次 あの人 この人16「犬と飼主」
    山折哲雄 いま、考えること16「開会式の明暗」
    中西 進 花満径100「桃李の歌(3)」

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