2021年05月24日

『機』2021年5月号

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社主の出版随想

▼この5月で、各社の決算が出揃ってきたが、利益がマイナスどころか、売上げが半減とか7割減とかの大企業の数字が出ている。こんな大企業の数字だから中小企業は、さらにひどい。わが出版業界も電子出版は少し伸びているようだが、硬派の書籍を出している出版社はどこも苦しい。勿論、小社も若干1、2の既刊書が、メディアで取り上げられたりして数ヶ月いい動きをしたが長くは続かない。安価で話題になっている新刊もそれ程大した部数が売れているともきかない。
▼出版のみならず新聞に到ってはもっと酷い状況のようだ。朝日・読売・毎日・日経など大手の全国紙も、部数は3割から5割近く減じ、広告の出稿量もかなり落ち込んでいるようだ。総頁数もどんどん薄くなっている。各社紙媒体だけでなく電子媒体も活用し読者離れを封じようとしているが、なかなかそうもいかない。挙げ句の果ては、大量の人員削減の話も聴く。そういう今足元で起きていることは、高度成長路線に舵を切ってから60年にして初めての体験だろう。
▼これからが、われわれ人間の真価が問われる時だ。従来からいわれているタテ割り行政、学問の細分化、放送メディアの白痴化、東京中心の政治・経済・文化のあり方、地方都市の疲弊、地方人口の減退と高齢化、中央集権から地方分権への転換の未実現、子供を縛りつける学校教育、国土の1%足らずの沖縄に70%以上の米軍基地、先住民アイヌの先住権……枚挙に暇なし。これらを一つ一つ実現していくためには、今何が必要か。何をわれわれ一人一人が持たなければならないか。それは、「自治」的自覚であると思う。(亮)

5月号目次

■〈特集〉戦没詩人、竹内浩三 生誕百年
「日本が見えない」の発見 小林察

■『祈り 上皇后・美智子さまと歌人・五島美代子』出版
わが師の蘇らまし 岩田真治
祈 り 濱田美枝子

■「草」と人間の関わりを描く「感性の歴史」
感情と自然の文化史 小倉孝誠

■ブルデュー『芸術の規則』などの芸術社会学で見る
ゾラの芸術社会学的美術批評 寺田光徳

〈リレー連載〉近代日本を作った100人86「五代友厚――時代を抜きんでた「富国」の実業人」 八木孝昌
〈連載〉「地域医療百年」から医療を考える2「人間へのまなざし」 方波見康雄
    沖縄からの声Ⅻ―2「沖縄戦は教科書から消えて行くのか!?」 金城実
    歴史から中国を観る17「新疆はいつ中国になった?」 宮脇淳子
    今、日本は25「水に流す思想」 鎌田慧
    花満径62「窓の月(1)」 中西進
    『ル・モンド』から世界を読むⅡ―57「「スペシアル・フクシマ」」 加藤晴久

4・6月刊案内/読者の声・書評日誌/イベント報告(創業30周年)/刊行案内・書店様へ/告知・出版随想