2020年06月25日

『機』2020年6月号

前号    次号



社主の出版随想

▼今や新型コロナが話題にならない時はない。46時中、われわれの生活にコロナが入り込んでいる。6月9日現在、世界の感染者は、701万人、死者は40万人。日本の感染者は、1万8000人、死者は930人(ジョンズ・ホプキンス大統計/国内はNHKまとめ)。感染者の内、死者の割合は、平均5~6%。世界人口77億の中での死者の割合は、0.0005%だ。これを多いと見るか少ないと見るか、見方は様々だ。ただ、今の時点で今回の新型コロナ禍が終わったと見るのは早計だと考えている専門家は多い。今から100年前に起きた通称「スペイン風邪」の時も、速水融氏の『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』によると、1918年春から1920年春まで約2年余、途中収まった時もあったが、3回の波が押し寄せて、延べ国内で45万人、国外で29万人の日本人が亡くなった。世界でも4500万人の死者が出たといわれる。今後の対策も今から十全に練って置く必要がある。
▼今月は、そもそも「ウイルスとは何か」という特集を組んでみた。われわれ人間に襲いかかってくるウイルスの正体とは何かを、3人の識者にそれぞれのお立場からご寄稿をお願いした。なかでも驚いたのは、中村桂子さんによる、ウイルスが哺乳類の胎盤形成に重要な役割を果たしている、という件り。勿論人類も然り。因みに、ウイルスは、この地球上に姿を現したのが三十数億年前。人類はたかだか2~30万年前。ウイルスの発見が、電子顕微鏡が発明された1930年代。0.0001ミリという微小で肉眼では見えない代物。
▼ウイルスと本当に人間は闘うことができるのか。当時、“感染症対策の第一人者”といわれた後藤新平ですら、台湾でマラリアに罹患し、帰国してからもその後遺症でかなり悩まされたといわれる。ウイルスとの共存しかないとなれば、われわれ人類は、これまでの来し方を見つめ直し、新しい第一歩を踏み出すことしかないように思われる。如何なものか。(亮)

 

六月号目次


六月号目次
■〈特集〉ウイルスとは何か
 ウイルスと人間の関係の長い歴史 中村桂子
 ヴィルスとの付き合い 村上陽一郎
 コロナは計算機と人間を区別する 西垣通

■19世紀に既に、地球史を描いた大歴史家がいた
 大歴史家ミシュレが遺した日記 大野一道

■全著作〈森繁久彌コレクション〉最終配本
 父のこと 森繁建
 森繁先生は凄い人! 安奈淳

■名コラムニストが、人間とは、思想とは何かを問う
 虚心に読む橋本五郎

〈リレー連載〉近代日本を作った100人75「井上馨――井上馨と明治日本の経済近代化」 由井常彦
〈連載〉今、日本は14「三代目政治家の横暴」 鎌田慧
    沖縄からの声Ⅸ―1(初回)「沖縄“復帰”の日に」波照間永吉
    花満径51「高橋虫麻呂の橋(8)」 中西進
    歴史から中国を観る6「一帯一路とコロナとペスト」 宮脇淳子
    アメリカから見た日本6「銃社会、アメリカ」 米谷ふみ子
    『ル・モンド』から世界を読むⅡ―46「コロナとカラス」 加藤晴久

5・7月刊案内/読者の声・書評日誌/刊行案内・書店様へ/告知・出版随想