2020年05月01日

『機』2020年4月号

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社主の出版随想

▼春を迎えたが、今年の春は例年のようにはいかない。中国に端を発した新型コロナが燎原の火のように世界に飛び火してきているからだ。春4月に入った地点では、いつ収束するかの見通しが立たない。これだけ情報が飛び交う社会だが、案の定、正確な情報はなかなか摑めないからだ。つまり、この新型コロナがどこまで拡大するかが見えないのだ。今の所、日本の致死率は欧米に比べかなり低いが、これも当てにならない。情報化社会の長所と欠点を同時に見る現在だ。ただ、この状態があと1ヶ月、2ヶ月続くと、大人から子供まで国民の精神状況がかなり不安定になるのではないか心配である。勿論、経済の面でも相当落ち込むだろうし、回復するのに相当な時間もかかるだろう。特に、隣国中国にかなりの企業や国民が依存している現在、これを正常化するのも大変なことだろう。

▼こういうウィルスによるパンデミック状況からわかってくるのは、世界は繫がっているということだ。国家と国家がいがみ合っている段階ではなく、むしろ、色々な面で相互に扶助し合う関係をもたなければ生存することすら難しい時代になったということだろう。一国一国が己れの利益に固執するのではなく、困っている国があれば手を差し延べるような関係が切望されている。これは民においても然りだ。そういう方向に進むと、この「新型コロナ」事件も、禍い転じて福と為す、ということになろう。

▼今月は、2人の大切な方の追悼の特集を組んだ。ロシア研究の泰斗、木村汎氏。かつて40年近く前、ソ連崩壊を予言した『崩壊した帝国』を出版した時、あるメディアで絶賛して戴いた。北海道大学のスラブ研時代と記憶している。その後、十余年前からプーチン3部作をはじめ数冊の本を出版させて戴いた。

▼もう1人は速水融氏。40年前に〈アナール論文選〉の「解説」原稿を戴いたが、E・トッドの『新ヨーロッパ大全』を日本で初紹介した時、すばらしい長文の書評を書いて戴いた。昨年も何回かご自宅で新著企画を打合せしたばかりだった。本当にお2人の突然の死に言葉もない。ご冥福を祈りたい。合掌(亮)

四月号目次

■〈追悼〉木村汎先生の逝去を悼む 袴田茂樹
     速水さんのヨーロッパ 斎藤修
     速水融先生を偲んで 鬼頭宏

■〈発刊〉A・コルバン他編『感情の歴史』全3巻 感情の歴史
 コルバン クルティーヌ ヴィガレロ

■「金時鐘コレクション」第6回配本
 真の連帯への問いかけ 金時鐘

■「中村桂子コレクション」第5回配本
 「生命誌絵巻」 関野吉晴

■全著作〈森繁久彌コレクション〉第4回配本
 森繁久彌さんの思い出 池辺晋一郎

■日本各地の「原風景」を訪ねる
 日本の「原風景」を読む 原剛

〈リレー連載〉近代日本を作った100人73「岩崎弥太郎」 武田晴人

〈連載〉今、日本は12「法を無視する政権」 鎌田慧
    沖縄からの声Ⅷ―2「首里城再建へ」 高良勉
    花満径49「高橋虫麻呂の橋(六)」 中西進
    歴史から中国を観る4「中国人にとっての漢字」 宮脇淳子
    アメリカから見た日本4「挨拶とマスクが守るもの」 米谷ふみ子
    『ル・モンド』から世界を読むⅡ―44「安楽死」 加藤晴久

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