2020年02月21日

現在の状況を予見したかのような『セレモニー』――新型コロナウイルス禍の先に中国はどこに向かうのか

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が止まりません。

厚生労働省の公式発表では、中国本土の感染者数は 74,185名、 死者数は2,004名(2月19日現在)となっています。一方、日本国内の感染者は2月20日時点で728名、死者は2名となっています(日テレNEWS24)。また、日本国内では厚生労働省と内閣官房の職員という中央官庁の役人がCOVID-19に罹患したとの報道もあり、まだまだ先行きが見通せない状況となっています。

そんな中、昨年5月に小社で刊行した王力雄氏の小説『セレモニー』では、まるで現在の情況を予見したような叙述がなされています。本作では、中央で出世を目論む登場人物、劉剛(リウカン)が幻のパンデミックを捏造した結果、中国で多大な混乱が生じ、その結果が意外な結末をもたらすのですが、これ以上はネタバレとなってしまうので、関心のある方は、是非本書を手に取って頂きたいと思います。

ただ、本作で作者の王力雄氏が追求されているのは、テクノロジーと結託した権力や独裁が意味するものを暴きたてることであり、それに対抗するためには、民主主義もテクノロジーと結合していかなければならない、ということです。王力雄氏は本作の「あとがき」で以下のように述べています。

 テクノロジーを使っての民主主義の探求は、私たちがいままさに為さなければならないことであり、また為すことができることである。しかも、それは独裁の外部にあってのみ為しうることでもある。テクノロジーによる民主主義をたえず成長させていき、ついにはテクノロジーによる独裁に取って代わってゆく。それは遥かな道のりであり大いなる企てでもある。そこで、まず最初の一歩としてだが、テクノロジーによる民主主義とは何かを理解する必要があるのではなかろうか。ではそれは、どこから始めればよいのか、いかにして取りかかるべきか。

ここで思い出されるのは、ルソーが『社会契約論』で提示した「一般意志」を、テクノロジーとの結合によって刷新しようと試みた東浩紀氏の『一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル』(講談社、2011年)の議論です。ここでその議論に立ち入ることは致しませんが、テクノロジーと政治との関係はますます緊密なものとなりつつあり、それをどう考えていくべきかは、今後の大いなる課題であるといえそうです。

なお、これまで本書に寄せられた書評等には以下のようなものがあります。

張競氏による書評(毎日新聞掲載2019年5月19日)
いとうせいこう氏による書評(朝⽇新聞掲載2019年06月29日)
麻生晴一郎氏による書評(東京新聞掲載2019年7月7日)
ザウルスでござる氏によるブログ記事(2019年7月8日)

また、王力雄氏の最近の発言を以下で読むことができます。

文春オンライン「発禁、監視、出国禁止……それでも中国の“反体制派作家”が「共産党独裁政権の崩壊」を恐れる理由」(2020年1月20日)
文藝春秋digital「一党独裁体制は終焉を迎える。」(2019年1月19日:冒頭部のみ)