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移民の運命
同化か隔離か

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移民の運命

  • エマニュエル・トッド
  • 石崎晴己・東松秀雄 訳
  • A5上製 616ページ
    ISBN-13: 9784894341548
    刊行日: 1999/11
  • 定価: 6,264円

「開かれた同化主義」の提唱!

『新ヨーロッパ大全』のトッドが放つ話題作。各国が移民を同化しうるのか、それとも隔離・差別するのかは、究極的には経済的要因ではなく、家族構成を初めとする歴史的な厚みを持った、国ごとの人類学的母胎によっていることを明快に論証。移民流入現象は、フランス人、イングランド人、ドイツ人に共通する感受性が存在しないことを暴露しており、これがヨーロッパ統合を解体する方向に働く力であると結論付ける問題作。

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目次

日本の読者へ
用語の手引き (訳者)
参考地図 (訳者)


序章   人類学 対 イデオロギー  受け入れ社会の全能


第1章 普遍主義と差異主義――心性構造における対称性と無対称性――

八つの差異主義  対称化された家族構造  対称化されない家族構造  先験的な形而上学的確信の概念  対称もしくは無対称の価値観は存続するか、 消滅するか?  家族システムから人類学的システムへ

第2章 アメリカにおける差異主義と民主主義 (1630年から1840年)

聖書の差異主義  イングランド植民史のその他の側面  独立宣言と民主主義の逆説

第3章 合衆国における白人諸民族の同化

直系家族型社会の脱工業化時代における存続――ドイツ、 スウェーデン、 日本  現代アメリカ家族  直系家族の破壊――ノルウェー人とユダヤ人の例  イタリア人の宗教――文化的換骨奪胎の概念  直系家族と社会・経済的適応  白人諸民族の融合  移民流入と人類学的同質性の存続

第4章 合衆国における黒人の隔離

アジア人、 白人となる  奴隷制から隔離へ  民主主義的意識の攻勢――1940年から1990年まで  差異主義的無意識の反撃  唯一の決定因としての身体的外見  社会的病理――新たな差異の製造  必要な仮設としての 「先験的な形而上学的確信」

第5章 多文化主義の幻想

複数の白人文化は存在しない  単一の黒人文化は存在しない  機能障害としてのヒスパニック文化  自由の限界

第6章 イングランド――階級の差異主義 対 人種の差異主義

内なる差異主義  1948年から1990年の移民流入  文化より肌の色  イデオロギー的調整――肌の色から多文化主義へ  マイノリティの変貌  二つの差異主義にはさまれたシーク教徒  パキスタン人――頑固な存続と原理主義  アンチル諸島人――道徳破壊  階級 対 人種

第7章 直系家族型システム――差異の知覚と単一性の夢

工業化以前の直系家族社会の形態  ドイツのユダヤ人、 日本の部落民、 ベアルヌのカゴ  単一性 対 差異――直系家族と一神教  ドイツの地域別教会とアングロ・サクソンの自由意志による教会  ドイツ史に見る縦の統合と横の細分化  兄弟の不平等から民主主義へ  ナチズム――民主主義と領主民族  差異主義の標的――外見か内面性か  交配のイデオロギー的処理  隔離から絶滅へ  スペインのユダヤ人の国外追放  極限への到達――19世紀ドイツ家族の病理  危機以後の差異主義

第8章 ドイツにおける同化と隔離

同質性の終焉――1960年から1990年までの移民流入  直系家族から血の権利へ  ユーゴスラヴィア人の共同体主義とトルコ人の核家族性  近代化――トルコでの成功、 ユーゴスラヴィアでの失敗  ドイツでは――ユーゴスラヴィア人の同化、 トルコ人の隔離  イスラムへの固着  ドイツによるトルコ人のイスラム化  不可触賤民集団の製造  差異の知覚と単一性の夢  不安の昴進  1985年から1993年  ドイツ民族の帰還  差異の選択

第9章 フランス――普遍的人間の国土

平等主義核家族から普遍主義へ  異種混合性――カトリック下位文化  アングロ・サクソンの同質性とフランスの多様性  直系家族とフランス的差異主義  モーラスとフランス的自民族中心主義  ドイツ、 アメリカ、 その他に対する態度  植民地における二分化  総合的地域と総合的人格  総合的形態としての国家  最低限の共通基盤――外婚制と親族システムの双系性  普遍に仕える差異主義

第10章 ユダヤ人の解放

伝統的ユダヤ性――家族と宗教  分離の選択、 同化の選択  ジプシーという逆の例  ドイツ――開放なき同化  アングロ・サクソン圏――同化と誤った肯定的自覚  フランス普遍主義とユダヤ差異主義  移動と移住――平等主義的個人主義の土地へのユダヤ人の流入  20世紀における同化の促進  疎外の少ない同化  19世紀中葉における同化――ユダヤ人にしてフランス人  ドレフィス事件とヴィシー――無関心主義 対 反ユダヤ主義  植民地アルジェリア――平等主義的にして個人主義的な反ユダヤ主義  歴史の方向

第11章 マグレブ的な人類学的システムの分解

マグレブの家族システム  植民地的分裂病  外婚制  フランスのアルジェリア人とドイツのトルコ人  個人的受容と集団的敵対  マグレブ文化に対する二つのフランス  家族の分解と運命の分離  イスラム教は副次的要因にすぎない  逆の例――ポルトガル人  モロッコ人とチュニジア人  トルコ人問題か? ドイツ人問題か?

第12章 フランスと有色人種

アンチル諸島――人種的外婚の曖昧性  不安を引き起こさない移民流入  アンチル諸島の人類学的システム  アジア人移民  二種類のアフリカ移民父系の人類学的システムの不変性、 双系システムの変動性  バミレケ族の直系家族  ソニンケ問題  人種問題なき社会問題か?

第13章 誤った自覚

アングロ・サクソン型差異主義の輸入  モーラス的主題系の再来  差異への権利はアノミーの要因

結論


[インタヴュー]
トッドのすべて――人類学、 アンガジュマン、 反EU   エマニュエル・トッド(聞き手)石崎晴己


訳者解説
訳 註
原 註
図表一覧

関連情報

■エマニュエル・トッド(Emmanuel TODD)■
1951年生。歴史人口学者・家族人類学者。フランス国立人口統計学研究所(INED)に所属。作家のポール・ニザンを祖父に持つ。L・アンリの著書を通じて歴史人口学に出会い、E・ル=ロワ=ラデュリの勧めでケンブリッジ大学に入学。家族制度研究の第一人者P・ラスレットの指導で、76年に博士論文『工業化以前のヨーロッパの7つの農民共同体』を提出。
同年、『最後の転落』で、弱冠25歳にして乳児死亡率の上昇を論拠に旧ソ連の崩壊を断言。その後の『第三惑星――家族構造とイデオロギー・システム』と『世界の幼少期――家族構造と成長』(99年に2作は『世界の多様性 』 (荻野文隆訳)として合本化)において、各地域における「家族構造」と「社会の上部構造(政治・経済・文化)」の連関を鮮やかに示す、全く新しい歴史観と世界像を提示。
新ヨーロッパ大全 』I ・II (石崎晴己・東松秀雄訳)(90年)では多様性に満ちた新しいヨーロッパ像を提示、『移民の運命 』〔同化か隔離か〕 (石崎晴巳・東松英雄訳)(94年)では家族構造が各国の移民問題に決定的な影響を与えていることを分析し、『経済幻想 』 (平野泰朗訳)(98年)では家族構造に基づく経済構造の多様性の認識から、アングロ・サクソン型個人主義的資本主義を唯一の規範とするグローバリズムを批判し、金融に過剰依存するアメリカ経済の脆弱さをいち早く指摘。
「9・11テロ」から1年後、対イラク戦争開始前の02年9月に発表された『帝国以後 』〔アメリカ・システムの崩壊〕 (石崎晴己訳)では、「米国は唯一の超大国」といった世界の一般的な対米認識に反して、「アメリカの問題は、その強さにではなく、むしろその弱さにこそある」と、アメリカの衰退、とりわけその経済力の衰退を指摘し、アフガニスタン攻撃に始まる米国の軍事行動を、自らの覇権を演劇的に世界に誇示するための「演劇的小規模軍事行動」と断定。28カ国以上で翻訳され、世界的大ベストセラーとなり、とりわけ独仏を中心とする、対イラク戦争反対の理論的支柱となった。
文明の接近 』〔「イスラームvs西洋」の虚構〕 E・トッド+Y・クルバージュ (石崎晴己訳)(07年)では、『帝国以後 』でのイスラム圏分析をさらに深化させ、出生率の下降と識字率の上昇を論拠に、「イスラム原理主義」の表層的現象ばかりに目を奪われる欧米のイスラム脅威論に反して、着実に進むイスラム圏の近代化を指摘。
デモクラシー以後 』〔協調的「保護主義」の提唱 〕(石崎晴己 訳=解説)(09年)では、サルコジ大統領誕生に体現されたフランス社会とデモクラシーの危機を分析し、「エリートが自由貿易体制に疑義を呈さないことが格差拡大、金融危機につながっている」と、需要を掘り起こし、ヨーロッパのデモクラシーを守る最後の手段として、均衡のとれた保護主義を提唱している。