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歴史

幻の野蒜築港
明治初頭、東北開発の夢

商品の詳細

幻の野蒜築港

  • 西脇千瀬
  • 四六上製 256ページ
    ISBN-13: 9784894348929
    刊行日: 2012/12
  • 定価: 3,024円

第7回河上肇賞 本賞受賞作!

明治初期、宮城県・石巻湾岸の漁村、野蒜を湧かせた、国際貿易港計画とその挫折。忘却あるいは喪失された往時の実情を、新聞史料から丁寧に再構築し、開発と近代化の渦中を生きた人びとを活写、東日本大震災以降いっそう露わになった、〈地方〉の疲弊に対して、喪われた「土地の記憶」の回復がもたらす可能性を問う。

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目次

はじめに

序 章
 野蒜築港概要/新聞史料

第1章 築港の時代
 維新のあとの宮城/困窮の原因/喘ぐ士族たち/士族に向けられる視線

第2章 築港によせる期待と不安
 国家プロジェクト野蒜築港/地域意識

第3章 築港をめぐる風景
 工事という近代化/工事に携わる人々/ 騒がしい日常

第4章 終 焉
 表面の順調/不穏な空気/市街地払下とコレラ/嵐の後

終 章 開発の記憶
 築港を振り返るとき/真山青果『焔の舞』/地域に残る記憶の断片/
 記憶の行方/新しい物語り/終わりに――3月11日を越えて

関連情報

 もし復興ということがあり得るとするならば、そこでは周縁が、たとえささやかであっても確固たる中心性を取り戻さなければならない。それは経済的な自立のみならず、当然精神的なものが含まれるのである。今、改めて東北各地域の自我の在り様が問われているのだと思う。
 記憶は自我と深く関係する。ここではいかに迂遠な道のようであるとしても、野蒜築港という象徴的な出来事における記憶の彷徨いを追ってみたい。人々は築港をどのような気持ちで迎えたのだろうか。地域にとってこの事件は何だったのだろうか。人々はどのように受け止め、記憶し、或いは拒絶し、忘却してきたのだろうか。まず、これまで塊のように取り扱われ主に外観として描かれてきた築港像を分解し開き、地域における工事の具体的な諸相を様々な視点から明らかにしていくことを試みる。その上で記憶の行方を追う。その道中でこそ、新たな自我の可能性を問うことができるのではないだろうか。
(本書より)


西脇千瀬(にしわき・ちせ)
1972年宮城県生。東北大学理学部卒・東北大学理学研究科博士前期課程修了。東北芸術工科大学博士課程中退。地域社会史研究者(民俗学)。野蒜周辺の地域誌 『奥松島物語』の編集に携わる。本書の元となった論文「地域と社会史――野蒜築港にみる周縁の自我」で第7回河上肇賞本賞受賞。