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社会学

豊かさのなかの自殺

商品の詳細

豊かさのなかの自殺

  • クリスチャン・ボードロ+ロジェ・エスタブレ
  • 山下雅之・都村聞人・石井素子訳
  • 四六上製 320ページ
    ISBN-13: 9784894348608
    刊行日: 2012/06
  • 定価: 3,564円

100年の変化と世界各国の比較を総合した 現代の「自殺」を考えるバイブル!

デュルケーム『自殺論』(1897)から百余年、「近代化=経済成長の世紀」としての20世紀における自殺のありようを、欧米のみならずインド、中国、ソ連/ロシア、そして日本をも視野に収めて分析、「豊かさ」がもたらす自殺抑止効果を証すと共に、若年層の自殺率の急上昇の謎に迫る、「自殺の社会学」の新しい古典の誕生。

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目次

 日本の読者へ――自殺は宿命ではない
 謝辞

序 論――自殺という危機に瀕する世界
第1章 貧困は自殺から人々を保護するのか?
第2章 離 陸――自殺増大の初期段階
第3章 大転換点
第4章 栄光の30年間
第5章 ソビエトという例外
第6章 オイルショックと若者の自殺
第7章 自殺と社会階級――その現状報告
第8章 二〇世紀――支配階級が自殺からいっそう保護される
第9章 だがしかし、彼女たちはそこから出ていく
結 論

 訳者あとがき 自殺と貧困―社会学の誕生
 原注/図表一覧

関連情報

 過去一世紀以上にわたり蓄積・分析されてきた膨大な量のデータを総合することを試みるために、デュルケームの『自殺論』において決定的に重要でありながらマージナルであった分析視角から始めよう。それは、自殺と豊かさの関係である。デュルケームが執筆していたのは、人類がかつて経験したことのない一世紀に及ぶ経済成長の後であった。デュルケームの著作において、彼が自殺との関係を分析した社会現象の大半は、ヨーロッパ社会の急速な富裕化(都市化、出生率の変化、宗教的慣行の変化、離婚率の上昇……)とほぼ直接的に関連している。それにもかかわらず、デュルケームは、自殺と豊かさの関係を側面的に研究したのみであり、「貧困が自殺から人々を保護する」という興味深く逆説的な命題を支持した。
 驚くべきことに、現代のデータは、デュルケームの診断をまったく裏付けるものではない! これは、単に社会学的知見が進歩し、データが改良されたからというだけでなく、自殺と社会現象の間の関係に根本的な変化が生じたからである。19世紀の自殺に関する社会的一覧表と20世紀のそれは、非常に部分的にしか一致しないのである。
(本書「序論」より)

 自殺は経済成長とともに減少するということを、われわれは観察した。しかし近代社会は、成長段階にあるとしても、ジョセフ・シュンペーターが「創造的破壊」と呼んだものに取りつかれており最も脆弱な人々を絶えず不安定にする。豊かさや安全や購買力の上昇を生み出した戦後の栄光の30年間に、経済生活のいくつかのセクターは成長の対価を払った。とりわけ周辺的な農業生産及び製鉄業である。こんにちでは完全雇用の時期だったとされるこの時代に、当時行われた調査が示す通り、工場労働者たちはいつも失業の不安にさいなまれていたのである。経済成長は全体として自殺の低下を促すのだが、経済の絶えざる再組織化が反対の方向を生み出す。それゆえ成長の時期においてさえ、自殺率は非常に高いレベルにとどまり続けるのである。
(本書より)



【著者紹介】
クリスチャン・ボードロ (Christian Baudelot)
1938年パリ生まれ。パリ高等師範学校の社会科学科名誉教授、モーリス・アルヴァクスセンター(国立科学研究センター)研究員。古典文学教授資格と社会学博士号をもつ。1968年から89年にかけて国立統計経済行政学校(ENSAE)の教授を務めた。
ロジェ・エスタブレとの共著が多く、『フランスの資本主義的学校』(マスぺロ社、1971年)『レベルアップ』(スイユ社、1989年)『行け! 少女たちよ』 (スイユ社、1992年)など多数。妻オルガに自身の臓器を提供し、その闘病生活をつづった共著『健康散歩』(ストック社、2008年)もある。

ロジェ・エスタブレ (Roger Establet)
1938年生まれ。プロヴァンス大学名誉教授。ニースのマッセナ高校を了え、1959年にパリ高等師範学校合格、ルイ・アルチュセールの生徒となる。哲学教授資格取得(1962年)後、『資本論を読む』の共著者となる。その後、統計的方法を学び、ジョルジュ・ギュルヴィッチの助手となる。1984年ナント大学のミッシェル・ヴェレの指導により社会学博士号を取得。クリスチャン・ボードロとの共著多数。