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『環――歴史・環境・文明』

清朝とは何か
別冊『環』16

商品の詳細

清朝とは何か

  • 岡田英弘 編
  • 菊大並製 335ページ
    ISBN-13: 9784894346826
    刊行日: 2009/5
  • 定価: 4,104円

“世界史”の中で清朝を問い直す!!

支配層であった満洲人の満洲語、そしてモンゴル語、漢語の三言語を公用語とした「大清」。独自の「八旗」制度などの統治システムで広大な国土を領した大清帝国(1636~1912)の全体像を、チベット、ロシア、ヨーロッパはじめユーラシア全土との関わりの中で明らかにする、画期的試み。

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目次

 

〈インタビュー〉 清朝とは何か
岡田英弘 (歴史学者)

Ⅰ 清朝とは何か

 

大清帝国にいたる中国史概説
宮脇淳子
世界史のなかの大清帝国
岡田英弘
マンジュ国から大清帝国へ 【その勃興と展開】
杉山清彦
漢人と中国にとっての清朝、 マンジュ
岩井茂樹
清代満洲人のアイデンティティと中国統治
マーク・エリオット
  (楠木賢道=編訳)
「満洲」 の語源 【文殊師利ではない】
岡田英弘
愛新覚羅=アイシン= ギョロ氏とは
杉山清彦


Ⅱ 清朝の支配体制

 

大清帝国の支配構造 【マンジュ (満洲) 王朝としての】
杉山清彦
「民族」 の視点からみた大清帝国 【清朝の帝国統治と蒙古・漢軍の旗人】
村上信明
大清帝国とジューンガル帝国
宮脇淳子
清朝とチベット【第5世ダライ・ラマと摂政サンギェーギャツォを中心に】
山口瑞鳳
清朝とロシア 【その関係の構造と変遷】
柳澤 明
雍正帝の政治【「即位」 問題と諸改革】
鈴木 真
貨幣史から描く清朝国家像 【清朝の複合性をめぐる試論】
上田裕之
北京で流行した満漢兼の子弟書
岡田英弘
江戸時代知識人が理解したネルチンスク条約
楠木賢道
満洲文字はモンゴルから、 チャイナドレスは満洲服だった
宮脇淳子
科挙官僚・祁韻士が作った 『王公表伝』
宮脇淳子


Ⅲ 支配体制の外側から見た清朝

 

「近世化」 論と清朝
岸本美緒
江戸時代知識人が理解した清朝
楠木賢道
琉球から見た清朝 【明清交替、 三藩の乱、 そして太平天国の乱】
渡辺美季
蝦夷錦、 北方での清朝と日本の交流
中村和之
清代の西洋科学受容
渡辺純成
近世ユーラシアのなかの大清帝国
杉山清彦
      【オスマン、 サファヴィー、 ムガル、 そして “アイシン=ギョロ朝”】
 
磁器と透視遠近法と雍正改革のはざまで 【旗人官僚年希堯の生涯】
渡辺純成
太平天国の乱
岩井茂樹
大清帝国と満洲帝国
宮脇淳子
『満文老』 と内藤湖南
宮脇淳子



清朝史関連年表  (前221~2008年)
図表一覧
編集後記

関連情報

現在の中華人民共和国の領土はすべて、一九一二年に崩壊した清朝の領土を継承したものである。ところが、一般に流布しているような「清朝は、秦・漢以来の中国王朝の伝統を引き継ぐ最後の中華王朝である」という視点は正確ではない。それはなぜかというと、清朝の支配階級であった満洲人の母語は漢字漢文ではなく、アルタイ系言語である満洲語であったこと、広大な領域を有した清朝の領土の四分の三が、同様に漢字漢文を使用する土地ではなかったからである。
 一六三六年、万里の長城の北側にある瀋陽に、女直人あらため満洲人と、ゴビ砂漠の南のモンゴル人と、遼東の漢人の三種類の人々が集まって、女直人ヌルハチの息子ホンタイジを皇帝に推戴した。これが清朝の建国である。正式な国号は「大清」であり、清朝は通称である。「大清帝国」も後世の呼び方である。さて清朝では初め満・蒙・漢三体、すなわち満洲語・モンゴル語・漢語の三言語が公用語として定められた。このあと領土が拡大するに従って、チベット語とトルコ語が加わり、清朝における使用言語は満・蒙・漢・蔵・回の五体になった。清朝では満洲人の故郷と漢地以外の土地は「藩部」と呼ばれ、言語も宗教も法律も異なっていた。一九一二年に清朝が崩壊するまで、帝国全土に通用する言語は満洲語のみで、清朝のかなりの公用文書は満洲語か満漢合璧(並記)で書かれたのである。現在、北京の中国第一歴史檔案館に所蔵されている何百万件という清代檔案(公文書)の半数が満文、半数が漢文なのである。
 ところが一九一二年に中華民国が成立すると、満洲語はほとんど死語となってしまった。現代中国では、満族と呼ばれる満洲人の後裔は一千万人を越えるが、満洲語を話す人間は新疆北部に居住するシベ族を中心として数万人のみである。かえって戦後の日本で満洲語研究が盛んになり、私が加わった『満文老檔』の研究は、一九五七年の日本学士院賞を受賞するに至った。このあと日本のみならず世界の学界において、清朝史研究に満洲語が必要であるという認識が定着したが、まだ研究者の数も少なく、一般読者にこのことが広く知れ渡っているとはいえない。
 そこで本企画では、漢文に加えて、満洲語やモンゴル語やチベット語やロシア語などの史料に基づく、さまざまな研究者による新しい切り口で、清朝それ自体を捉え直したいと考えた。これまでの日本の東洋史の蓄積も大いに取り入れ、日本やヨーロッパとの関係もふくめて、清朝という大帝国の全体像を明らかにしたい。

 岡田英弘 (東京外語大学名誉教授)