2019年04月27日

『機』2019年4月号


前号   

【社主の出版随想】

▼来月より新元号「令和」になる。その命名者は、小誌に長きに亘って連載していただいている中西進氏との噂。上古文学の専門家とのことだが、かなり守備範囲も広く、現代を洞察する眼も確かなものをお持ちの学者とお見受けする。かつて、学芸総合誌・季刊『環』にても、静岡県知事の川勝平太氏と「文明のターミナルとしての日本」をテーマにした熱論を繰り広げていただいた。それにもう一つ対論を加え、加筆補正していただき、今秋には一書にしたいと考えている。

▼西暦二四年度から、新紙幣の顔が替わると。一万円札は渋沢栄一、五千円札は津田梅子、千円札は北里柴三郎に。それらがどのようにして決定したかはわからぬが、今回の顔ぶれを見ると、やはり日本国自体少し変わってきたのかなという思いがする。

▼主観的な意見を述べさせていただくと、三者共、後藤新平と直接、間接に人脈がつながっている。渋沢は、云うまでもなく〝日本資本主義の父〟と教科書では書かれているが、渋沢自身、「資本主義」という言葉は使わない。「資本主義」ではなく「合本主義」。つまり、資本を一人が独占するのではなく、小さな元手を集めた集団の経営が、日本の資本主義にはもっともふさわしいと渋沢は考えた。自らも国立銀行をはじめ、五百を超える企業を作りながらも、その後は退いて、人に任せる式を生涯貫いた。しかも、後年、後藤と知り合ってからも、養育院をはじめとする社会事業や国民の娯楽場などの事業にも積極的に参加した。(『後藤新平と五人の実業家たち――公共・公益の精神、渋沢栄一・益田孝・安田善次郎・大倉喜八郎・浅野総一郎』後藤新平の会編参照)

▼津田梅子は、岩倉使節団の際、最年少の満六歳で同行し、アメリカで教育を受け、帰国してその精神を活かし、一九〇〇年、女子教育の英学塾を起ち上げる。当時、女子教育に力を入れていたのが、後藤新平の生涯の友、新渡戸稲造。新渡戸は、東京女子大、日本女子大にもさらに津田英学塾にも尽力した。

▼北里柴三郎は、十九世紀末に独のコッホの下に留学し細菌学を研究していた。そこに、内務省衛生局に居た後藤新平が私費留学し、以来、終生の友情が続いた。一年間の猛勉強で博士号を取得し、衛生局長に復帰した後藤新平は、遅れて帰国した北里の働く場が閉ざされているのを見るに見かね、福沢諭吉に直談判。福沢はそれを快く受け入れ、慶應義塾の中に北里の伝染病研究所が誕生したのである。(亮)

■石牟礼文学が内包する〝芸能の力〟に肉迫!
石牟礼道子と芸能 赤坂真理 いとうせいこう 町田康 (司会)赤坂憲雄

■独裁の完成か? 警察国家の崩壊か?
IT技術と独裁体制 王 柯

■「入管法」改定は、日本社会を変える契機となるか?
開かれた移民社会へ 石原進 鈴木江理子 棚原恵子 藤巻秀樹 (司会)宮島喬

■震源地としての〝文化大革命〟を、世界史の中で考える
中国が世界を動かした「1968」 楊海英

「猪飼野」を生きるひとびと 金時鐘

■短期集中連載・作家ラフェリエール 2
世界に向けて書かれた文学 立花英裕

〈リレー連載〉近代日本を作った100人61
「内藤湖南」井上裕正

〈連載〉今、世界はⅤ―12(最終回)
「プーチンの焦らし作戦」木村汎

沖縄からの声Ⅳ―12(最終回)
「神話と琉球文明」海勢頭豊

『ル・モンド』から世界を読むⅡ―32
「人口爆発?」加藤晴久

花満径37
「独り子の歌(一)」中西進

生きているを見つめ、生きるを考える49
「ゲノム編集を赤ちゃん誕生につなげるとは①」中村桂子

国宝『医心方』からみる25
「鮒(鯽魚)の効能と禁忌」槇佐知子

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