2019年02月01日

『機』2019年2月号


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【社主の出版随想】

▼〈承前〉パリ三日目、最後の日。ランチは、エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリご夫妻と、お住いの近くのレストランでいただく。氏には、一九八三年来日時に、井上幸治氏と近著『モンタイユー』を中心に対論していただいた。日仏を代表する歴史家同士の対話は、いつしか、歴史とは何か、歴史の方法をめぐる話になった。延々三時間の対話は、時空を超えたすばらしいものになった(井上幸治『歴史とは何か』所収、絶版)。一九八〇年末に、井上先生の紹介で、樺山紘一氏らの編訳によるラデュリ氏の『新しい歴史』を出版してから約四〇年。齢九〇になろうとするラデュリ氏。足は少し弱ってこられたとはいえ、頭脳は明晰。近く氏の「歴史とは何か」の企画が届くだろう。

▼夕刻、歴史家ミシェル・ペロー女史宅に招かれた。夫君もご一緒。昨春出版された『ノアンのジョルジュ・サンド』が大著にもかかわらずかなりの反響の模様。M女史とサンドの話で盛り上がる。書斎やサンド関係の古書が並ぶ部屋にも案内された。彼女も齢九〇のはずだが、まったくお歳は感じさせない若々しい身のこなし。G・デュビィとの共編による西欧の『女の歴史』(全五巻一〇分冊、別巻二、一九九四―二〇〇一)以来二〇余年の女史との関係。来日時には、熊本で「ジョルジュ・サンドと与謝野晶子」をめぐる対談を作家の永畑道子さんと。その後、阿蘇の温泉でお躰をゆっくり休めていただいた。近く日本でも『部屋の歴史』(仮)の邦訳出版が予定されている。夜は、作家のラフェリエール氏と合流。ウマイ?日本食に舌鼓を打ちながら、今後の仕事の話に花を咲かせた。

▼翌日は早朝パリを発ちブレーメンに飛行機で。空港にバーバラ・ドゥーデン女史の姿があった。彼女の車で、早速イバン・イリイチが眠るお墓に直行した。丁度十五年前(一周忌)に訪れたが、変らない簡素な十字架のお墓があった。二人でイバンを偲び、必ずやイバンの思想を日本に根づかせることを誓う。その後バーバラから、今世界でかなり大きなプロジェクトが始まって出版もいよいよと聴く。この西洋が生んだ世界の大巨人の思想をいかにしてわが日本に届けられるか、こちらの真価が問われていると思いつつ帰国の途についた。(亮)

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