2011年04月01日

『機』2011年4月号:時代の変革者たちの言葉

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 産経新聞朝刊に連載中の「次代への名言」。一月に小社より『次代への名言 政治家篇』として上梓されたが、今月、『時代の変革者篇』が刊行される。
 この『時代の変革者篇』に収録されるのは、以下のような人物たちの名言である。
 秋山好古・真之、坂本龍馬、日本武尊、武蔵坊弁慶、楠木正成、足利尊氏、真田幸村、徳川家康、宮本武蔵、熊沢蕃山、西郷隆盛、勝海舟、新渡戸稲造、渋沢栄一、岩崎弥太郎、本田宗一郎、松下幸之助、五代友厚、織田信長、豊臣秀吉、高杉晋作、吉田松陰、孔子、孟子、朱子、王陽明ほか。
 武士道の黎明期から幕末・維新期、さらには孔子、孟子にまで遡り、自己の命を省みず、かつ命を見つめつつ時代と格闘した人々の名言を集めた本書から、いくつかをご紹介させていただきたい。

熊沢蕃山

 かつて徂徠は、「蓋し百年来の儒者の巨擘、人才は則ち熊沢、学問は仁斎、余るは碌々として未だ数ふるに足らざるなり」と語る。あの誇り高き徂徠がなぜ? と思われる読者も多いだろう。中江藤樹を師にもつ熊沢蕃山(一六一九―九一)は江戸初期の儒学者であり陽明学者である。主な著書として『集義和書』『集義外書』『大学或問』などがあるが、実学の思想家、経世家として生涯を生き抜いた。一六八七年、「処士横議」を理由に、幕府より下総古河に禁固され、そのまま獄死した。


「人は皆、天地の子孫なれば何のいやしきといふ者かあらん。」(熊沢蕃山)

山岡鉄舟
 山岡鉄舟(一八三六―八八)は、一刀正伝無刀流剣術の開祖である。維新のおり、単身官軍の営所に乗り込み、西郷隆盛と勝海舟との会談を周旋し、江戸開城が実現し江戸は戦禍を免れた。明治天皇侍従として信任が厚かった。


「善悪の理屈を知りたるのみにては、武士道にあらず。善なると知りたる上は直に実行に顕はし来るを以て武士道とは申すなり。」

勝 海舟
 勝海舟(一八二三―九九)は万延元(一八六〇)年、咸臨丸を指揮してアメリカに渡り、帰国後は海軍操練所を設立するなど活躍した。


「晴てよし曇りてもよし不二の山 もとの姿はかはらざりけり」

渋沢栄一
 後世、「日本近代資本主義の父」と称され、様々な起業にかかわった渋沢栄一(一八四〇―一九三一)は、『論語』に基礎をおいた確固たる思想を持っていた。

 
「政治界でも又実業界でも、利を見て義を忘れている。義利が合一せねば真正の文明も成し得られず、真正なる富貴も期し難い。」

(編集部)