2018年10月13日

竹下しづの女 理性と母性の俳人 1887-1951

10/13 図書新聞 【寺井谷子氏】

 先に『真実の久女ー悲劇の天才俳人1890ー1946』を著した坂本宮尾氏による評伝『竹下しづの女ー理性と母性の俳人1887ー1951』は、その調査、綿密細緻を極める。何より、当時の資料に当たっての社会状況や組織の細やかな解説は、時代を理解させ、導いてくれる。
(中略)
 この一冊を成した坂本氏は、その中間点に位置する世代である。子を背負い抱きつつ、家庭と学問の二つながらに、向き合って一つ一つを越えてこられたであろう。母なる世代を仰ぎつつ、「家庭」だけではない世界を同時に自身のものとするために奮戦してきた世代と言える。記憶の出発点は敗戦後の時期から始まっていよう。女性先達の苦労や努力を実感出来る。更に次世代への理解の上に次の地点を指すことも出来よう。今回の、明治生まれ、且つ進取の気に富む「竹下しづの女」の足跡を辿るに最適で誠実な先導者を我々は得たと言える。
(中略)
 女性先達の真っ直ぐな想いと生きた道を示しつつ、この一冊は、読者に新たな力を与えてくれるだろう。