『週刊ポスト』9月14日号
二〇一五年七月に九十三歳で亡くなった哲学者の鶴見俊輔に私は何度もお目にかかったことがあるが、鶴見さんの口から、姉和子さんを除いて、他の弟妹のことを耳にしたことはなかった。
だから今回、妹である内山章子さんの回想集『看取りの人生』に目を通して驚いた。
まず文章が素直で素晴らしい。ある意味俊輔氏や和子氏の文章より名文かもしれない(俊輔氏や和子氏の場合二人が修得した学問が文章の上で邪魔になっている時がある)。