2018年08月19日

百歳の遺言 いのちから「教育」を考える

8/19 日本農業新聞 「読書」

 著名な教育研究者とJT生命誌研究館館長の対談と、二人の往復書簡からなる本だ。生命(いのち)の視点から教育を考えてきた大田さんと40億年の生きものの歴史から、生命・人間・自然の大切さを学び取ってきた中村さん。二人の対談を往復書簡を通じて、「教育」の本質とは何なのかを考えさせてくれる。 
 日本の教育は昔から「上から下へと諭す」こととされ、そこから発生するのが人間を物のように位置づける、画一的な「人づくり」であることに強い疑問を持つ二人。教育の基本は「自発的な学びを助ける」ことであり、「ひとなる」を目指すことで希望を見いだせる、とする議論は深い意味を持つ。 
 人は「つくる」ものではなく「なる」ものであり、だから大事なのは「ひととなる」ことだとする考え方や、随所で語られる農の見直し、農を教育の基本に置くことの提案など、じっくりと受け止める必要のある内容にあふれている。