2018年08月01日

評伝 横井小楠 未来を紡ぐ人 1809-1869

『出版ニュース』9月上旬号

横井小楠は幕末維新の先駆的思想家といわれながら、日本史の教科書にも登場せず、知名度も低い。本書は横井小楠の足跡を追いながら、西欧諸国の現実を見抜き、近代日本の歩むべき構想を提言、「公共」の思想の重要性を説いた中身と歴史的意義を考察したものだ。冒頭、勝海舟が『氷川清話』で述べた人物評が引用されているが、小楠の思想と洞察力に感心するさまが分かる。さらに『五箇条の御誓文』の「万機公論に決すべし」はその土台となる文章を小楠が作成したことや、後の後藤新平や徳富蘇峰らにも影響を及ぼしたさまが描かれる。豊富なエピソードからも小楠の人柄が伝わってくる。