2021年11月05日

気候変動から考える

先日、2021年のノーベル物理学賞に、気象学者で米国のプリンストン大学上席研究員の眞鍋淑郎氏が、ドイツのマックスプランク研究所のクラウス・ハッセルマン氏、イタリアのローマ・ラ・サピエンツァ大学のジョルジオ・パリージ氏とともに選ばれました。

受賞理由は「地球温暖化の予測のための気候変動モデルの開発」です。

小社では、1998年6月25日、科学ジャーナリストのさがら邦夫氏によって行われた眞鍋氏へのインタビュー「シミュレーションが予測する全地球の気候異変」を掲載した『地球温暖化は阻止できるか――京都会議検証』(1998年12月刊)を、先日緊急重版させて頂きました。

当該インタビューは、米国で活動する眞鍋氏が一時帰国し、日本の宇宙開発事業団と海洋科学技術センターによる共同プロジェクト「地球フロンティア研究システム」の地球温暖化予測研究領域の領域長であった時代に、日本語で応じた数少ない貴重なインタビューです。

眞鍋氏は、迫りくる地球温暖化という気候変動を科学的に予測するモデルを開発した功績により、今回のノーベル物理学賞の受賞に至ったわけですが、気候変動に対する現状の世界の動きを見ると、私たちは、それを祝っているばかりでは済まない状況に差し掛かっている、と思われます。

国立環境研究所が提示しているデータ等において、また、気象災害の増加傾向が体感されるように、地球温暖化の傾向は明らかであり、世界が、このまま手を拱いている状態が続けば、近い将来、気候変動による破局的な事態を迎えることが不可避となってしまう可能性が非常に高いと言わざるを得ないのではないでしょうか。

小社では、創業以来、常に環境の問題を意識した書籍を刊行し続けてきました。ここでは、その中から、気候変動や地球温暖化、そしてより広く環境の問題をどう考えるべきかに踏み込んでいくために助けとなる書籍をご紹介いたします。

科学ジャーナリスト・さがら邦夫氏が警告し続けてきた地球温暖化の危機

さがら邦夫氏は『地球温暖化は阻止できるか――京都会議検証』の編者でもありますが、早くから地球温暖化の危機を警告し続けてきました。そして、その警告は、残念ながら次第に現実のものとなってきています。私たちは今ひとたび、その警告に耳を傾けなければならないのではないでしょうか。

  

気候変動を歴史から考える――エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリ

エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリ氏は、フランスのアナール派歴史学、第三世代の第一人者いうべき歴史学者ですが、「気候」そのものを初めて歴史学の対象とし、自らのライフワークとして取り組んできました。小社では、『地中海』のフェルナン・ブローデルが讃えた前代未聞の伝説的名著『気候の歴史』と、その後の研究を集大成した大著『気候と人間の歴史』(全3巻刊行予定、「Ⅰ 猛暑と氷河 13世紀から18世紀」のみ既刊)、そして自らその大著を解説した『気候と人間の歴史・入門――中世から現代まで』をお届けしています。

  

環境の危機から人間を捉え返す

「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という諺がありますが、安全や安心は、時に人を怠惰にさせるのかも知れません。裏を返せば、危機は人に思考を促し、存在を賦活化する傾向があると言うこともできます。ここでは、環境の危機を発条とし、そこから思考した著者たちによる書籍の数々をご紹介いたします。