2018年11月10日

医師が診た核の傷 現場から告発する原爆と原発

『希燦時』 第38号 2018年秋号

本書は、広島長崎原爆の被爆状況の真相追及から始まり、チェルノブイリでの被害状況、福島原発事故の検証へとつなぐ。いずれもが治療にあたった医師の証言を丁寧にたどっている。筆者はいう。原爆被害やチェルノブイリ原発事故に共通している教訓は「真実は後々になって語られる」と。
(中略)
福島原発事故でも放射能汚染による被害隠しはすでに行われている。「事故直後から政府やいわゆる放射線医学の専門家たちがあらゆるマスコミを通して繰り返し語られた『100ミリシーベルト以下では、直ちに健康被害は起こりません』という言葉は『長期的には健康影響が出る』ということの裏返しである」という阪南中央病院・村田医師の指摘は、冷静に真実を見つめる姿勢が大切という本書の基本理念と一致する。
メルトダウンした福島第一原発の収束プロセスは二転三転しながら延期し続けている。核と人類は共存できないと結ぶ著者の訴えは多くの日本国民の声でもある。