2018年11月08日

現場とつながる学者人生 市民環境運動と共に半世紀

11/8 毎日新聞(夕刊) 「憂楽帳」欄 【高村洋一氏】

 「人の顔が思い浮かばない研究調査はしません」。NPO法人「市民環境研究所」代表理事の石田紀郎さん(78)を囲む勉強会で、変わらぬ「石田節」を聞いた。大学の研究者時代も論文を書いて出世する気がない。苦労して得たデータも、それを必要とする人にあげてしまう。
 京都大で「農薬ゼミ」を主宰し、後に大学院教授も務めたのに学会から距離を置いた。「内輪で拍手し合ってもねぇ」と言って。反公害に徹し、学者というより「ザ・市民運動家」。琵琶湖の水質浄化から農薬被害の告発、干上がる中央アジア・アラル海周辺の植林まで市民とつながる活動ばかりだ。
 その石田さんが「現場とつながる学者人生ー市民環境運動と共に半世紀」を出版した。大学の現状を嘆き、今の研究者について「フィールドが何かも知らない。インターネットの中がフィールドだと思っているかもね」と批判した。
 福島原発の事故現場周辺の住民支援も続けている。「講義でフクシマを語らない京大の先生が多い。批判も行動もしない大学は滅びる」。語る大学論は辛口で、市民の声と聞いた。