2018年11月01日

医師が診た核の傷 現場から告発する原爆と原発

11/1 福竜丸だより No.408

 本書は毎日新聞大阪版に連載された「平和をたずねて 医師の診た記録」に加筆・改稿したもので、「原爆編」には原爆投下直後から治療にあたり、未知の「原爆症」と向き合い、治療法を模索した医師たち、「原発編」には、原発事故による放射能被害と向き合う医師たち総勢二〇余人が紹介されている。
(中略)
 原爆の放射線によって傷つけられた染色体が多重がんをひき起こしている事実、東京電力福島第一原発事故後、甲状腺がんや白血病の労災認定を受けている人の存在、これからさらに増えるであろう事故処理や廃炉作業を担う原発労働者の累積被爆線量など、今後も「医師の診た核の傷」はなくならないだろう。
 原爆被害者の診療からみえてきた内部被爆の知見は、核実験被害者の診察に活かされ、小児甲状腺の研究が原発事故による被害の解明へとつながっていく。医師たちもまた苦悩しながら国内外の医師たちにバトンを渡し続けていることが記録されている。
 わたしたちは、いまなお核の世界を生きている。医師たちのカルテは「核と人類は共存できない」ことを明確に示しているという警告は重い。