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叢書〈世界システム〉経済・史的システム・文明
(全五巻)
イマニュエル・ウォーラーステイン 責任編集

 ソ連社会主義の崩壊、欧州統合など、国家の枠組みの問われる今、〈世界システム〉という概念で、今世紀社会科学の全領野を包括する I・ウォーラーステインが、日本の読者に向けて責任編集する画期的な初の試み。
ウォーラーステインの主宰する、フェルナン・ブローデル・センターの機関誌『レビュー(季刊)』より、各巻のテーマに則した重要論文を精選する。

1 ワールド・エコノミー <新装版> A5上製 256頁 3360円
  山田鋭夫・市岡義章・原田太津男訳        
(2002年9月刊)
国民的発展か世界経済的発展か I・ウォーラーステイン/近代世界システムの発展パターン I・ウォーラーステイン、T・K・ホプキンス他/世界経済論的アプローチにおける地理的尺度 P・J・テーラー/世界経済の今日的発展 F・フレーベル/ヨーロッパの発展と第三世界 D・ゼングハース/ゼングハース論文へのコメント S・アミン
◇4-89434-302-9

2 長期波動 <新装版>A5上製 224頁 3150円
  山田鋭夫・遠山弘徳・岡久啓一・宇仁宏幸訳   
(2002年9月刊)
長期波動の研究はなぜ論争的なのか I・ウォーラーステイン/資本主義世界経済の循環リズムと長期的トレンド I・ウォーラーステイン、T・K・ホプキンス他/コンドラチェフ波動は上昇しているのか下降しているのか I・ウォーラーステイン/資本主義的プロセスとしての長期波動 I・ウォーラーステイン/長期波動と労働過程変化 R・クームズ/1780年から2000年までの長期波動の解釈のために A・ティルコート/六ヵ国の長期波動 J・B・テーラー/段階的多項式回帰 H・ブリル/循環をめぐる問題 J・B・テーラー
◇4-89434-303-7



3 世界システム論の方法A5上製 208頁 2940円
  山田鋭夫・原田太津男・尹春志訳   
(2002年9月刊)
序 世界システムはいかに研究すべきか I・ウォーラーステイン/世界 ― 経済の階層化――半周辺圏の探求 G・アリギ+J・ドランゲル /世帯構造のパターンと世界 ― 経済 R・H・マクガイア+J・スミス+W・G・マーチン/歴史的視点からみた労働運動のグローバル・パターン 世界労働にかんする研究ワーキンググループ /一八〇〇年以前の世界 ― 経済における商品連鎖 T・K・ホプキンス+I・ウォーラーステイン/南アジアの編入と周辺化――一六〇〇 ―一九五〇年 R・パラット+K・バー+J・マトソン+V・バール+N・アーマド/参考文献
◇4-89434-298-7



〈続巻〉
4 第三世界と世界システム I・ウォーラーステイン他
5 アナール派の諸問題 I・ウォーラーステイン、F・ブローデル他
ご注文の方法


【書評・紹介】
  • 10/06 「読売新聞」 “出版アラカルト”欄

  • 【藤原書店PR誌『機』2002年9月号より】

    ウォーラーステイン責任編集〈叢書 世界システム〉待望の続巻刊行!

    世界システムはいかに研究すべきか

    イマニュエル・ウォーラーステイン

     ここにわれわれは、フェルナン・ブローデル・センターのいくつかの研究ワー キンググループからの一連の報告を読者に提供し、もって『レヴュー』(Revi ew)誌創刊一〇周年(一九八六年)を記念したい。これら諸報告から読者が、 目下進行中のわれわれの知的営為の広がりについてだけでなく、それと同時に 、われわれが研究活動を組織していくやり方についても、あるイメージが得ら れるようにと願っている。

    第一のステップ――明確化の段階

     はじめに研究組織について一言述べたい。われわれのセンターにはいくつかの研究ワーキンググループが置かれている。各グループは通例五〜一五人のメンバーからなり、かれらは各種分野出身の教授や大学院生である。多くの場合、第一のステップがいちばん困難にみちている。それは明確化の段階である。つまり、われわれが着手しようとする問題はたいてい、すでに誰か他の人によって手がつけられてきた。だがわれわれはそれらの問題を、世界システム論と自ら称するパースペクティブから研究しようとしているのである。他人はまだなしえていないとわれわれが主張でき、またそのように考えることさえできるのは、どういうことなのか。それをわれわれは、それぞれの場で明確にしなければならない。
     この作業はすぐに終わる場合もあれば、数年を要する場合もあり、また失敗してそのグループが解散する場合もある。こうした作業段階のものが、書かれた成果に至ることはめったにない。しかし時には、そのグループが、自らの当初の考えを公的な批判にさらすよう要請されていると感じることもある。南アジア・グループのケースがそれであって、このグループは本誌掲載の論文〔本書第五論文〕を一九八五年の第一四回南アジア・コンファレンスに提出した。この論文は、当該分野における論争点を検討したものである。そこでは五つの主要問題が選び出され、解答すべき方向が示唆されている。これは一種の下草刈りの段階にあるものだといえよう。

    第二のステップ――具体的な研究の定式化

     だが、論争点を検討するというのはどんなに実りが多かろうとも、それ自身は研究でない。次のステップがおそらく最大の困難をなす。つまり、明示された知的難問を定式化し、その難問に着手しうる一連の具体的な研究ステップを定式化することである。これはつねに難題をなす。もっともこれを集団的に行なおうとすると、おそらく内部批判のプロセスがあるからはるかに注意深くなされることが多いとはいえ、困難はいっそう大きくなる。以下では二つの公式の研究提案を示したい。商品連鎖〔本書第四論文〕ならびに労働運動〔第三論文〕についてである。これら両プロジェクトは現在進行中である。

    第三のステップ――実際の研究

     第三ステップはまちがいなく最も魅力的である。つまり実際の研究だ。われわれの場合、研究グループは集団で決めた相互の課題分担によって進められている。自らの仕事の中間報告を提出するに十分なグループが三つある。世帯構造〔本書第二論文〕、南部アフリカ〔本書では省略〕、東地中海港湾都市〔同〕にかんするグループである。これらの報告には進行中の研究が示されている。資料はまだすべてが収集されたわけでない。結論が出たわけでもない。だが、研究への明確な方向づけは示されている。
     最後に、こうした研究がすべてなされた時、モノグラフという形で成果が生まれる。これは多分、最も満足すべき局面であろう。モノグラフ的な研究は副産物として、いくつかの発見を総括することによって、後継者の研究に道を開くことも多い。半周辺についての論文〔本書第一論文〕は、まさにそうした完成された副産物である。
     以上のような諸論文を、ここでは順序をひっくり返して提示する。最初に完成品を、それから進行中の研究を、その次に研究提案を、そして最後に研究分野の検討を、という具合にである。

    様々な研究グループ

     ところで、これら諸論文といえども、じつはわれわれの知的関心を例示するものでしかない。われわれは、史的システムとしての資本主義世界 ― 経済(world-economy)を分析しようとしているのである。われわれの研究のなかには、トピック中心に組織されているものもあれば、いろいろな地理的圏域(geographical zones)の枠内にあるものもある。だが、それらのすべてが課題としているのは理論的問題なのである。
     半周辺グループ 半周辺グループが関心を寄せてきたのは、世界 ― 経済の構造は継続的に三層的(trimodal)だということが証明されるかどうか、そしてもしそうであるなら、そういった三層的分布が維持されるメカニズムは何であるか、とりわけ半周辺群はいかに持続していくのかということである。  世帯グループ 世帯グループの関心は、賃金水準は世界 ― 経済のさまざまな圏域で大きく異なっているが、そういった不均等性は賃労働がどのように各種世帯構造へと編入されているかということによって説明可能かどうか、また逆に今度は、各種世帯構造のあり方はどの程度まで世界 ― 経済情勢が変化した結果なのかを確かめることにある。
     南部アフリカ・グループ 南部アフリカ・グループの関心は次の問いにある。すなわち、世界 ― 経済の枠組みのなかにあって、この地域内の諸国家にいくつかの経済行動を強制するような地域(regions)と呼ばれる何ものかが構築されたのかどうか、また、もしそうならば、そういった地域はどのように、誰によって、誰にたいして構築されたのかという問いである。
     東地中海グループ 東地中海グループが興味をもっているのは、かつての外部世界(external arena)が世界 ― 経済に合体され、ついでこれが周辺化されたわけだが、その政治的帰結は何かということである。オスマン帝国のケースがそれである。とりわけ、システムの内部で諸国家がどのように形成され、また周辺化プロセスにおいて中心となる人物(この場合は港湾商人)がナショナリズムの形成においてどのような役割を担ったかという問題である。
     世界労働グループ 世界労働グループの関心は、労働運動がその存在の全期間にわたって、また世界各国ごとに、その戦闘性の程度に差があるのはなぜかを説明することであり、世界 ― 経済の構造変化を反映するような体系的な運動パターンが存在するどうかを説明することである。
     商品連鎖グループ 商品連鎖グループが興味を寄せるのは以下の点である。すなわち、こうした連鎖を通じての世界 ― 経済における生産諸過程の統合は、世界 ― 経済の当初から存在したのだとどの程度まで証明できるか、またこうした連鎖は不断に様変わりするのだが、そういったことは情勢の変化と直接に連動しているのだと言いうるかどうか、ということである。
     南アジア・グループ 何らかの単一の知的焦点が定まっていないのは南アジア・グループだけである。というのも、他でもないこのグループは、まだ自らの研究提案を定式化していないからである。というか、このグループの仕事は、世界システムという理論的パースペクティブに敏感な人間の眼からは、特定の時 ― 空ゾーンにかんする既存の史料総体がいかに読まれうるかを示すものとして理解されるべきである。
     ある意味でフェルナン・ブローデル・センターは、われわれの全仕事――そう、全世界の学者共同体の仕事――は、多分に「進行中」(in progress)のものだと信ずる。われわれはそういった材料を、基礎諸概念をめぐるわれわれの討論、フィードバック、批判、集団的再検討に向けての継続的探求の一部として公表する。多くの方々の参加を歓迎したい。
    (山田鋭夫訳)

    (Immanuel Wallerstein/ニューヨーク州立大学ビンガムトン校フェルナン・ブローデル経済・史的システム・文明研究センター所長)

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