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《目次》
1 マルクス経済学の基本性格 2 マルクス経済学の形成 〈幕間〉戦中派とマルクス 3 経済の本質と労働 〈幕間〉大英博物館とマルクス 4 マルクス・エンゲルス問題 5 新マルクス・エンゲルス全集 |
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【書評・紹介】 |
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私がはじめて教壇に立ったのは敗戦直後。二十六歳の私が学生に一読を推めたのは、吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』であった。本書に丸山眞男や鶴見俊輔が強い感銘をうけたことが、末尾に丸山が書いた回想にでてくる。丸山によれば、本書の特色は、人生いかに生くべきかという倫理が、社会科学的認識とは何かという問題ときりはなさずに問われている点にある。当時のわが国では、倫理と論理を結びつけたものはなかった。それで私は、ミルや河上の『自伝』や、マルクスの『ドイツ・イデオロギー』、ミルの『自由論』、河上の『貧乏物語』などを学生に推薦しつつ、将来できたら私も自分なりの『君たちはどう生きるか』を書いてみたいと念願するようになった。 (すぎはら・しろう/元甲南大学学長)
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《目次》
1 J・S・ミルと現代 〈エッセイ〉ミルと日本人 2 イギリス思想史とJ・S・ミル 〈エッセイ〉トロントのタンポポ 3 ミル・マルクス問題 4 J・S・ミル研究史 5 ミル著作集の創刊と完成 解説/あとがき/初出一覧/人名索引(外国人名・日本人名) |
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日本におけるミル思想の受容 ジョン・ステュアート・ミル(1806-73)という人物を御存知ですか 。十九世紀のイギリスの思想家で、わが国では経済学者として有名ですが、広 く人文・社会科学に精通し、種々の政治・経済の時事問題に評論の筆をふるっ た当時の代表的なオピニオン・リーダーでした。その名声は当時ロンドンに留学していた日本の青年たちによって伝えられ、 とくにミルの『自由論』は邦訳されて、自由民権運動を促進する働きをしまし た。明治十年代に地方の私塾や学校で旧来の道徳や政治の原理にかわるべきも のを模索していた青年たちにミルの著書は、広く自由主義・個人主義のテキス トとして愛読されたのです。 明治の後半期から大正にかけて日本が先進国に追いつこうと競争する中で、 青年は民族主義や国家主義の思想をのばしてゆく一方、近代社会の中で生れた 貧富や差別を克服するための社会改革の思想も重視するようになります。また こうした左右の思想的対立の中でこそ基本的人権に基づく民主主義の進展が求 められることになり、大正デモクラシーの時代には、明治初期に見られたミル 思想への熱意がふたたびよみがえって、ミルの女性解放運動に影響をあたえた 書物や、代議制統治論の現代的問題等を解説した書物などが何種類も出版され 、日本の普通選挙制度を実現する上に役立ちました。また彼の生涯をふりかえ って時代の変動とともに歩んだ道や思想的影響をうけた人々のことをかいた『 自叙伝』の邦訳も出て、彼の人物に対する関心が一段とふかまりました。 私がミルの書物にふれたのは昭和十年代の学生時代でしたが、その頃出され た彼の『経済学原理』の邦訳書は、社会主義にふれた所が伏字にされ、ミルが あれほど強く主張していた言論・出版の自由がその頃の日本では失われていま した。私が戦後、留学先を彼の住んだロンドンにしてミルという人物にふれた いと思ったのも、ミルがこのように明治以来の日本にさまざまな影をおとして きたからだったのかもしれません。 ナチュラリストとしてのミル ミルの『自叙伝』に登場しない有名な人物を二人紹介しておきましょう。一 人は精神分析で有名なフロイト、もう一人は『昆虫記』の著者ファーブルです 。ミルは生前ドイツ語で全集を出しましたが、その中でミルの遺著の『社会主 義論』を担当したのがフロイトでした。彼はミルと直接の関係はなく、医学の 若い研究者だったのですが、たまたま友人に依頼されてその仕事をし、ミルの 文章からすくなからぬものを学んだようです。ファーブルとミルとはフランス のアヴィニオンにミルが寓居を構えてからの親友で、自然の観察という趣味が 一致した彼らはよく一緒に植物や昆虫の採集に出かけました。愛妻に先立たれ たミルにとってファーブルとの交友は晩年の貴重な収穫でした。私の著作集全四巻を貫流しているテーマの一つはミルとマルクスとの対比で 、資本主義のつぎには社会主義になるだろうという見通しでは二人は一致して いるのですが、それがどんな社会主義なのか、またそれを実現してゆく方途は 如何という点では、二人の考え方は対立しています。この問題を私は第一巻と 第二巻とでとりあげました。また現在国際的にも見られるのは、ローマクラブ などがとりあげた環境問題、地球の保全という人類的課題の先覚者としてのミ ルの思想的再評価ですが、著作集第二巻の『自由と進歩――J・S・ミル研究 』でも、「2 自然・人間・労働」の中で、「ナチュラリスト・ミル」の人と思 想についてのべています。自然と人間とが共存してはじめて、人間的な社会主 義も実現できるというミルのメッセージを読みとっていただけたらと念願して います。 (すぎはら・しろう/元甲南大学学長)
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