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いま、琉球人に訴える!

琉球の「自治」

松島泰勝
Now Printing

軍事基地だけでなく、開発・観光のあり方から問い直さなければ、琉球の平和と繁栄は訪れない。琉球人である著者が、豊富なデータをもとにそれぞれの島が「自立」しうる道を模索し、世界の島嶼間ネットワークや独立運動をも検証する。琉球の「自治」は可能なのか?

四六上製 352頁 2940円
◇4-89434-540-4 2006年10月刊)

【書評・紹介】

●目 次●
序論
第一部 開発によって島々は自立したのか
第1章 石垣島の開発史
第2章 西表島の開発史
第3章 「日本復帰」と奄美諸島の開発
第二部 琉球の開発と密接に結びつく米軍基地
第4章 琉球の開発と米軍基地
第5章 米軍基地の経済学
第三部 島々の「経世済民」
第6章 琉球弧の経済学
第7章 八重山諸島における「経世済民」の実践
第四部 琉球の真の自治とは何か
第8章 琉球独立を巡る動き
第9章 世界の独立運動と琉球
第10章 琉球の将来像
あとがき
〔附録〕関連年表・地図

【藤原書店PR誌『機』2006年10月号より】

●「基地―開発―観光」の連鎖を断ち切る方途はあるのか?

琉球人よ、目を覚ませ
松島泰勝
 いま、琉球は危機的状況におかれている。
 日本復帰」後、琉球の全域を対象にした労働、土地、貨幣の市場化が怒涛のように推し進められてきた。膨大な補助金が投下されたが、共同体が衰退し、環境が破壊され、島の商品化が進み、失業率も高いままである。経済自立はいつまでたっても達成できない。
 琉球を日米政府に依存させることを目的にカネが投じられてきたのだ。日本政府による支配・管理体制が強化されたのであり、琉球を支配するための開発であった。琉球弧で近代化、開発をこれ以上推し進めたらどうなるのだろうか。日本政府による琉球の経済振興策を検証し、琉球開発を後押ししてきた経済学を批判し、新しい「琉球弧の経済学」を提示する時期にきている。
  琉球では活発な基地反対運動がみられる。しかし、日米両政府による振興策、経済的妥協策が反対運動を沈静化させてきたのも事実である。琉球人自身が経済振興と引き換えに、基地の存続を許し、開発を求めてきた。われわれ琉球人が琉球を食い物にしてきたという、自己批判が求められている。
 われわれ自身が変わらなければ基地はなくならない。自分たち(琉球)は善であるが、他者(日本や米国)は悪であると訴えただけでは、琉球の問題は解決されない。開発、近代化の意味を問い直し、「本当の豊かさ」について考え、これまでの生き方を改め、自らの力で外部からの誘惑を跳ね返し、基地と補助金との連鎖を断ち切らないと、基地はいつまでも琉球の地に存在し続けるだろう。軍事基地とともに近代化のあり方をも再検討することで、「琉球の平和」を実現する可能性がみえてこよう。
 太平洋戦争において琉球は「本土防衛」のための捨石となった。戦後、日本は琉球を切り捨て、米軍による基地拡大を認めることで、自国の経済成長を達成しようとした。琉球の犠牲の上に日本の経済成長があった。
 現在、日本国民である琉球人が、基地によって日常的に心身の被害をうけているにもかかわらず、日本政府は日米同盟の強化に邁進している。大半の日本国民は、琉球人の生活や生命を脅かす米軍基地や日米地位協定を認める政党を投票によって支持している。琉球の米軍基地は振興開発と交換される形で維持されてきた。つまり日本国民の税金によって基地が維持され、開発が行われているのである。
 琉球の基地・開発問題は、日本、日本人の関与を前提としている。日本人、米国人等の非琉球人が自らだけの生存、経済的繁栄、軍事戦略のために、琉球を「捨石」にし続けることは、植民地としての処遇であるといえる。琉球は植民地状況から脱しなければならない。
 本書の自治論は、琉球のさらなる開発を志向する自治・独立論とは異なる位置に立つ。市場原理主義を掲げ、琉球の完全な市場化を目指し、米軍基地を押し付ける日本の国家体制から自立する必要がある。
 奄美諸島から先島諸島までの島々は一体の存在であり、独自な歴史、文化、政治経済体制、生活様式等を有する地域であることを明示するために、本書では「琉球、琉球弧、琉球人」という言葉をあえて使うことにした。
 本書によって、米軍基地を琉球に押し付け、開発しようとする日米両政府、日本企業、日本人、また近代化や開発に期待する琉球の行政機関、琉球人に対して問題提起をし、特に琉球人の目を覚まさせたい。
 
(まつしま・やすかつ/東海大学助教授)