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「東京港野鳥公園」オープン15周年記念

鳥よ、人よ、甦れ

東京港野鳥公園の誕生、そして現在

加藤幸子

Now Printing

 東京に野鳥が帰ってきた
都市の中に“ほんものの自然”を取り戻そうと芥川賞作家が大奔走、野鳥たちの群れつどう“東京のオアシス”を実現!

四六並製 312頁 2310円
2004年5月刊)
◇4-89434-388-6


【書評・紹介】

  • 9/5 しんぶん赤旗「書評」欄
  • 7/24 読売新聞「こころの四季」欄

  • 《目次》

    わが町の自然性 序にかえて
    1 都市の神話
    2 わが町の自然誌
    3 「小池しぜんの子」前史
    4 母親参加の幕開き
    5 大井埋立地との出会い
    6 大井埋立地の自然の仲間たち
    7 自然保護大作戦
    8 埋立地に野鳥の森ができるまで
    9 運動前線のおんなたち
    10 署名の季節は暑かった
    11 卸売市場との攻防戦

    《関連書》
    よみがえれ!“宝の海”有明海
    だれでもできる環境家計簿
    いのち、響きあう


    【藤原書店PR誌『機』2004年5月号より】

    東京のオアシス「東京港野鳥公園」オープン15周年記念!

    東京に野鳥を

    加藤幸子

    「この自然を残して!」
     15年前、東京の大田区に風変わりな公園が誕生した。東京港野鳥公園というやや堅苦しい名前をつけられたこの公園は、従来の都市公園とは異なるいくつかの特色をもっていた。
     その一 野鳥をはじめ多種多様の生物の生息地としての環境を保全する。
     その二 人間はそこにあるままの自然を楽しむか、学習するために利用する。したがってアミューズメント型の施設はつくらない。
     その三 人工で造成された埋立地に再生された自然である。
     その四 行政主導ではなく地域の住民が自主的に動いた結果、設立に至った。
     その四については、私自身が住民側の代表として、八年にわたり東京都と折衝を重ねたのであった。本書は東京港野鳥公園設立が決定された昭和58年(1983)直後、私が書きおろした『わが町東京 野鳥の公園奮闘記』(三省堂)から一部を削除し一部を書き加えたものである。20年近くたってはいるが、読み返して見ると2〜40代だった当時の私たちの熱っぽさがまざまざと思いだされてくる。今でこそ自然保護関係のNPO、NGOは公認された市民組織として受けいれられているけれど、当時は奇人変人扱いされたことが何度もあった。それにもめげず、その上結末がどうなるやら見通しもないままに、丸8年間も行政を相手に奮闘してきたのは、この自然を残して!という単純明快な願いが一同にあったからである。思いもよらず豊かな自然地を身近に発見した興奮と喜びが、原点となった。

    多様である東京の風土
     文明が都市生活をおおいつくしていても、自然はその間隙から侵入し、ときには文明そのものをもとの環境の代りに利用する。東京はそういう風土の町なのだ。つねにあるべき自然に戻ろうとし、いるべき野生生物を受けいれようとする。東京港野鳥公園は東京という風土があってこそ実現できた。多様であることこそ東京の風土の特徴だ。東京には、ヒトと他の生きものが共存する素地がある。歴史的にも文化的にも。これを充分理解せぬままに再開発が進められているので、あちこちに“仮想現実”的な町が出現した。そういう町には野生生物は不似合な存在にちがいない。
     自然界ではヒトも含めてすべての生物がつながりあっている。その理を認めるのが自然性というものだ。東京を“わが町”と感じるのも、自分と同じ町の空気を吸っている人々といやおうなくつながっているからである。自分に有利だから、快いからつながっているのではなく、つながりが先にあるのだ。ただしこのつながりは形にできるような類のものではない。そうあることを確かめることもできない。ただ感じるだけだから、むずかしい。

    野鳥公園に子供たちを
     すでに発達した文明を“過去”に追いもどすわけにはいかない。できるとすれば免疫力をつけることだけだろう。のめりこんでいる仮想現実の世界の外に、ヒトを含むおびただしい生物の世界が同時に存在していることに気づくだけでもよい。
     現在の野鳥公園にはそういう目に見えない役割も加わっているのだ。
     私たちが野鳥公園の運動に励んでいた時代、事情はもっと明快だった。子供たちは自然の中で遊びたいのに、身近な自然はなくなっていた。生活圏の中に自然を取りもどすことが目標だったのだ。でもすでにテレビやパソコンゲームなど、夢中になれる別世界をもっている子供たちを、どうやって密室から野外に誘いだすのか。現代の子育ては至難の業にちがいない、と親たちが気の毒になる。それでもやはり連れていってほしい。どんな子供の中にも、何かのきっかけで目覚める自然性の芽が眠っている。そのきっかけは本書で詳述する野鳥公園であるかもしれない。


    (かとう・ゆきこ/作家)