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理系に関心があるすべての読者へ

物理・化学から考える環境問題

【科学する市民になるために】

白鳥紀一 編
吉村和久・前田米藏・中山正敏・吉岡斉・井上有一
Now Printing

 現代科学技術の引き起こした最大の事故といえる資源環境問題を具体的に考察することによって、現代の自然科学・技術の性格を知ると同時に、資源環境問題を解決しようとする時に基本的に必要なことを明らかにする。

A5並製 272頁 2940円
2004年3月刊)
◇4-89434-382-7


【書評・紹介】

  • 4/4 朝日新聞「読売」欄

  • 《目次》

    第1章 はじめに  白鳥紀一
    第2章 フロン・二酸化炭素による地球規模の環境問題  吉村和久
    第3章 環境放射能とはどんな問題か  前田米藏
    第4章 環境問題と物理学  中山正敏
    第5章 公共利益の観点からみた原子力研究開発政策  吉岡斉
    第6章 民主的であることの「正しさ」  井上有一
    第7章 科学的方法の限界と科学者・技術者の位置について  白鳥紀一

    《関連書》
    『「循環型社会」を問う』
    『循環型社会を創る』


    【藤原書店PR誌『機』2004年3月号より】

    “環境問題”から浮かび上がる科学者・政策立案者・市民のあるべき姿を追求!

    物理・化学から考える資源環境問題
    ――科学する市民になるために――

    白鳥紀一

     九州大学には高年次教養科目というカテゴリーの講義があって、専門教育科目の受講を始めた学生たちに、その専門教育の意味を広い視野から見直すような講義を提供しています。その中で理学部の物理学科と化学科が担当して、1996年度から98年度まで開かれた「自然科学概論」という講義を全面的に改稿して作られたのがこの書物です。講義は物理学科と化学科の教師それぞれ二人に比較社会文化研究科の吉岡斉と奈良産業大(当時)の井上有一を加え、全学部の三年生以上の学生を対象としてオムニバス形式で行われました。
     一体と考えられている現代の科学技術総体について全ての市民が知り、考える必要があることは明らかです。我々の生活は、衣食住から移動の手段、情報の交換まで、すべてを技術に負っています。今の生活水準を維持し向上させるためには、技術の発展がますます必要だと多くの人が考えています。またその一方、各地の戦争・武力紛争から各種の事故まで、死や災厄をもたらす多くの技術が世界中にゆきわたっています。たとえ戦争や事故がなくとも、技術の発展の結果である環境の悪化と資源の枯渇が近い将来我々の生活を危うくする可能性が高いことは、一般に認識されています。

    環境問題は科学と社会の接点
    そこで私どもはその資源環境問題をテーマとして、ケース・スタディをすることにしました。現在の資源環境問題は産業革命以来の技術の発達に由来し、さまざまな意味で自然科学の本質を示す具体例です。解決のための方法の確立が緊急に求められていることも、いうまでもありません。と同時に、資源環境問題は経済や文化などに関わる社会の問題ですから、社会にとっての科学技術、市民から見える科学技術の位置も、浮かび上がらせてくれるはずです。
     この本の構成は、第一章で現代の科学技術の分析的な性格としばしば現れる確率的法則の特徴を考えた後、二・三章では環境問題の個別の例について科学的な理解の進め方を、四章では自然科学から見たときの資源環境問題全体の枠組を、述べています。ここまでは科学からの視点です。それに対して、資源環境問題に関係して科学技術が果たすべき役割を政策決定の面から解明するのが五章の、市民の立場から見るのが六章の目標です。これらは、科学を外側から見る視点であると同時に、資源環境問題を解決してゆくために必要な社会の条件、そこでの科学の役割を明らかにするものです。それらを踏まえて七章では、事故という面から現代の科学技術の性格をもう一度考えます。ここで事故というのは、技術の引き起こす意図しなかった結果です。そういう広義の意味で考えれば、資源環境問題は現代科学の引き起こした最大の事故だといえましょう。

    資源環境問題を解決するには
     この書物では、具体的に資源環境問題を考えることによって現代の科学技術の性格を知ると同時に、資源環境問題を解決しようとする時に基本的に必要なことを述べたつもりです。生物学のトピックスがないことは講師の構成に由来しますが、問題の基本的な性格を論じる上での欠陥とは思いません。環境計画学と呼ばれるような工学的な対策手法についての記述が欠けていることは、この本の限界というべきでしょう。しかし、問題の基礎的な性格は押さえている、と著者としては自負しています。読者諸氏のご批判を頂ければ幸いです。


    (しらとり・きいち/法政大学工学部客員教授)