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アナール派の巨匠による初のアナール論

アナールとは何か

進化しつづける「アナール」の一〇〇年

I・フランドロワ編
尾河直哉 訳
Now Printing

 ショーニュ、フェロー、ル=ロワ=ラデュリ、ル=ゴフをはじめとするアナール派の巨匠がブローデルとの関係やアナールの歴史について縦横無尽に語り下ろす野心作!「歴史学」を超え人文社会・自然科学の総合という野心を抱き出発した、いまだその全貌を知られざる「新しい歴史学」とは何か。13人の巨匠の肉声で綴る世界初の画期的企画、日仏協力で実現。

四六上製 368頁 3465円
2003年6月刊)
◇4-89434-345-2


【書評・紹介】

  • 2003/9/7 「朝日新聞」 “書評”欄
  • 週刊「読書人」 8/8号
  • 2003/8/3 「読売新聞」 “書評”欄

  • 《目次》
    序 『歴史総合雑誌』から今日の『アナール』へ

    第1部 学派をなした雑誌、『アナール』

      『アナール』での三十年
    M・フェロー
      進化しつづける『アナール』
    J・ル=ゴフ
    第2部 ブローデルの継承

      「時系列」の歴史学
    P・ショーニュ
      フランス歴史学の合流点
    E・ル=ロワ=ラデュリ
      地理学とブローデル
    Y・ラコスト

    第3部 アナール学派に対峙して

      ムーニエ学派
    Y=M・ベルセ/M・フォワジル
      アナール学派とフーコー
    A・ファルジュ

    第4部 新しい方法論 新しい対象

      歴史人口学
    P・グベール/J=P・バルデ
      心性史から感性の歴史学へ
    A・コルバン
      新しい歴史学と身体
    J=P・ペーテル
      歴史のプラティックと認識論的省察
    R・シャルチエ

    《関連書》


    【藤原書店PR誌『機』2003年6月号より】

    進化し続ける「アナール」の百年を鳥瞰する独創的な試み

    ブローデル以来の歴史学の歩み

    I・フランドロワ
    尾河直哉 訳

    『アナール』におけるブローデルの影響力

     フランスの歴史家をめぐるこの散策は、藤原書店の希望によりフェルナン・ ブローデルを出発点とすることとなった。出発点としてごく至当な選択である 。というのも、長期持続にかんするブローデルのプログラム=宣言が『アナー ル』に発表された一九五八年いらい、歴史研究の分野ではさまざまなできごと が起こったし、その反映をお読みいただいたインタビューに辿ることもできる わけだが、「ブローデル的契機(モメント)」はきわめて重要なものとして各人の精神に組み込まれ続け、必ずしもわざわざ立ち戻るべき点とは見なされていないからである 。
     人選は私が自由に行なった。〔雑誌連載にあたって〕藤原書店が加えた希望 はごく少数である。他の時代に比べて近代史〔十六世紀から十八世紀末〕の専 門家が多すぎるという印象をもたれるかもしれない。 しかし、これもまた『ア ナール』におけるブローデルの影響を反映しているのである。

    ブローデル以来の『アナール』

     『アナール』とはなによりもまず雑誌である。一定の重要性をもつ唯一の雑 誌というわけではないが、さまざまな趨勢や変化を推し進め、さまざまな要求 を課してきた結果、「『アナール』学派」と称されるまでになった唯一の雑誌 である。フェルナン・ブローデル以来、ブローデルによって選ばれた二人の後 継者マルク・フェローとジャック・ル=ゴフによって継続されている『アナー ル』の歴史と方針を明らかにしたい。これが私の目論見であった。
     本インタビューでは偉大な継承者ピエール・ショーニュとル=ロワ=ラデュ リによって「ブローデル的契機」が明らかにされている。インタビューには地理学 者がひとり入っているが、びっくりなさらないでいただこう。べつだん歴史家 たちのなかに彷徨い込んできたわけではない。リュシアン・フェーヴルなきあ と、フェルナン・ブローデルは歴史学と地理学の関係に仕事の力を注いできた 。そして、地理学者にして歴史家たるすべを知るイヴ・ラコストは、この仕事 に最も注目するひとりなのである。ラコストは地政学の学生たちにブローデル の仕事を読むよう勧めている。

    新しい展開を見せ続ける『アナール』

     イヴ=マリ・ベルセとマドレーヌ・フォワジルにはロラン・ムーニエと伝統 的な歴史学に、アルレット・ファルジュにはミシェル・フーコーと新しいタイ プの歴史学に言及していただいたが、これは『アナール』が豊かな交流によっ て培われ、そしてその交流によって新たな研究方向が切りひらかれたことをと りわけ示したかったからである。
     また、ピエール・グベールとジャン=ピエール・バルデには人口統計学につ いて、ジャン=ピエール・ペーテルには身体の歴史について、アラン・コルバ ンとロジェ・シャルチエにはブローデル時代の心性史の流れを汲む表象の歴史 について、それぞれお話をうかがった。私がそこで明らかにしたかったのは、 新しい歴史学が要求する研究方向、すなわち新しい方法論によるアプローチと 新しい対象である。
     以上のように個人に偏った不十分な散策ではあった。しかし、それでも、フ ェルナン・ブローデル以来の歴史学の歩みをかなり把握できたと考えている。 歴史学の歩みを築いたこれらの方々には自由に語っていただいた。こちらから の誘導はほとんどない。取り留めのないこれらの発言を読み直していただいた が、どなたも手を加えるということはなさらなかった。健康上の理由から、私 の質問に答えるかたちでインタビューテクストをくださったピエール・グベー ルと、郵便でやりとりしたアルレット・ファルジュのお二人以外、後からの書 き直しはいっさいない。

    (Isabelle Flandrois/歴史学)
    (おがわ・なおや/早稲田大学講師)