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アジア・ブームの今、過去のアジア認識を問う

「アジア」はどう
 語られてきたか

近代日本のオリエンタリズム

子安宣邦

Now Printing

 脱亜を志向した近代日本は、欧米への対抗の中でとりわけ一九三〇年代−四〇年代に「アジア」を語りだす。だがそこで語られた「アジア」は、脱亜論の裏返し、都合の良い他者像にすぎなかった。再び「アジア」が語られる今、過去の歴史を徹底検証する。

四六上製 288頁 3150円
2003年4月刊)
◇4-89434-335-5


【書評・紹介】

  • 「ことし読む本 いち押しガイド2004〈リテレール別冊19〉」 “Book Wave 2003 ことしの本を振り返る”欄
  • 2003/8/25 「しんぶん赤旗」 “読書”欄
  • 2003/8/16 「中日・東京新聞(夕刊)」 “土曜訪問”欄
  • 2003/6/23 「サンデー毎日」 “自由のために”欄
  • 2003/6/23 「公明新聞」 “読書”欄
  • 2003/6/15 「中日・東京新聞」 “読書”欄
  • 2003/6/15 「毎日新聞」 “本と出会う 批評と紹介”欄
  • 2003/6/8 「朝日新聞」 “書評”欄
  • 2003/6/1 「日本経済新聞」 “書評”欄

  • 《目次》

    1 『文明論之概略』とアジア認識
    2 「世界史」とアジアと日本
    3 ヘーゲル「東洋」概念の呪縛
    4 昭和日本と「東亜」の概念
    5 何が問題なのか──廣松渉「東亜新体制」発言をめぐって
    6 東洋的社会の認識
    7 大いなる他者──近代日本の中国像
    8 近代中国と孔子教
    9 「日本一国文明史」の夢想

    【藤原書店PR誌『機』2003年4月号より】

    近代日本の「アジア」認識から、我々の過去を問い、現在を照らし出す

    「東亜」から「東アジア」へ

    子安宣邦

     昨年六月、台湾大学で「東亜文化圏の形成と発展」という主題による国際学術シンポジウムが開かれた。私がこの会議に提出した論文「『東亜』概念と儒学」は『「アジア」はどう語られてきたか』に収録されている。私はその会議の口頭報告で「東亜文化圏」という主題をめぐって疑義を呈した。私がそこで何を問題にし、何に疑義を抱いたのか。ここにその口頭報告を再録することで、私の新刊の著書の紹介の文に代えたい。まさしく私の著書は、東アジアの諸地域で現に進行しつつある事態にアクチュアルに対応しつつ、私が進めていったアジアの歴史的な認識作業である。以下は私の口頭報告の要旨である。

    「東亜」概念とは

     「東亜文化圏」とは「中華文化圏」の別称だということは大会趣意書にある通りです。しかし中華文化の文化的中心から東亜文化がいわれることはありません。中華文化の中心と周縁という関係のなかで、周縁から立ち上げられる領域的な文化概念が「東亜文化」であり「東亜文明」です。文化的な領域概念「東亜」とはそのように中国起源の文化の東アジア諸地域への多様な展開を記述するための概念として、近代日本にまず成立しました。東亜考古学、東亜美術史、東亜仏教史などの学術的な記述が生まれました。しかしこの「東亜」は帝国日本の東アジアへの政治的・経済的・軍事的経略の展開とともに強い政治的な概念となっていったことは周知の通りです。「東亜」は「東亜協同体」や「大東亜共栄圏」という帝国日本の政治的理念として展開されました。東亜考古学、東亜美術史などの学術的記述もこれと無縁ではなく、帝国日本の眼差しに貫かれているといえます。

    「東亜」の実体化

     「東亜文化圏」を構成する中国起源の漢字や儒学、律令や暦制などの共通要素を東アジア各地域に指摘しながらなされる「東亜文化圏」の成立を確認していく作業とは、実は「東亜文化圏」そのものを作り出していく作業です。それは「東亜」を文化的中心からの文化実体的な概念として再構成することです。それはやはり帝国的な眼差しに貫かれた、帝国的な文化領域概念たらざるをえません。しかし帝国の文化的中心からは周辺諸民族における文化・言語受容の屈折も屈従も見ることはできないでしょう。

    関係枠としての「東アジア」

     私は方法的な概念としての「東アジア」を提案します。たとえば「東アジア」という共通の関係枠をもつことによって、一国史的な、あるいは帝国的な歴史記述を相対化し、新たなアジアの歴史記述を可能にするような方法的な概念にすることです。「東アジア」を関係枠とした多層多様な交流的実践を通して、この地域のあらゆる生活者にとって真に必要な「東アジア」が生まれることを私は信じたいと思います。

    (こやす・のぶくに/日本思想史家)


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